セリアック病の症状 診断 治療
セリアック病の症状 診断 治療について説明します <症状> 主たる症状は 吸収不良によって生じる慢性の下痢 脂肪便です 慢性の下痢 体重減少 鉄欠乏性貧血 腹部膨満感 疲労感と不快感 浮腫 庖疹状皮膚炎 といった症状もみられ 骨密度減少もみられます![]()
また 運動失調症 末梢神経障害をはじめとする神経障害や 精神疾患などを呈することもあります ビタミンの吸収収障害により ビタミンBl B12 D E欠乏症が起こり 神経障害が生じると考えられます さらに女性では 原因不明の不妊症 初潮の遅れ 原因不明の流産も認めます このように多彩な症状を呈しますが 一方で 50%の人では明らかな症状がありません <臨床経過> 典型例では 小児期に発症しますが 40~50歳やそれ以上の年齢での発症もあります 女性の罹患率は男性の2倍と高い 発症は緩徐で グルテンを摂取してから発症まで 数カ月から数年の時間的ブランクがあるのが特徴的です また 上記のように明確な症状がない場合もあり 血清学的スクリーニングで偶然見つかる無症候性例もあります <診断に用いられる検査> *小腸粘膜の組織学的検査・十二指腸生検 *血清学的検査 の2種類の検査で診断されます @生検による病理診断 正確な診断を得るために 内視鏡検査で 十二指腸球部~下行脚にわたる4か所以上から 生検組織を採集することが推奨されています 病理学的所見として *上皮内リンパ球浸潤 *絨毛萎縮粘膜固有層への単核球浸潤 *上皮細胞内アポトーシスの増加 *陰窩過形成 などが認められますが これらは必ずしもセリアック病に特異的な所見ではありません @血液検査 血清学的検査では この病気に特異的な 抗組織トランスグルタミナーゼ(tissue transglutaminase:tTG)-IgA抗体 が検出され その感度は98%で 特異度は97%です また グリアジンを標的とした抗体として *抗グリアジン抗体 *合成脱アミド化グリアジンペプチド (deamidated gliadin peptides:DGPs)に対する抗体 の2種類が検出されます 抗グリアジン抗体は 欧米では正常者でも5~12%が陽性とされ その感度と特異度が低いため セリアック病の診断ではもはや推奨されていませんが 非セリアックグルテン感受性患者で発現する 唯一のバイオマーカーです 一方 抗DGPs抗体は 高い感度と特異度をもち 特に抗DGPs-IgG抗体は 感度70~95% 特異度99~100%で 抗tTG-IgA抗体と同等の診断価値があります 抗筋内膜抗体(endomysial(EMA)-lgA)も検出され その感度は90% 特異度は98%です これら3つの抗体を組合せると 97~98%の正診率が得られます
<診断と鑑別> @診断 次の5項目のうち4項目以上で診断する方法が提唱されています *セリアック病の典型的症状 *セリアック病の血清IgAクラスの自己抗体が高力価陽性 *HLA-DQ2とDQ8の両者あるいは一方の検出 *小腸生検でセリアック病性腸疾患の存在 *無グルテン食への反応 @鑑別 セリアック病と間違えられやすい病気として *過敏性腸症候群 *乳糖不耐症 があります 書き手も 件の患者さんを過敏性腸症候群と思い治療していましたが セリアック病でした <治療> @グルテンフリー食 治療は グルテン制限食を食べることです
異常な自己免疫応答を引き起こす 環境因子(グルテンを含む食物)を食べないことで 臨床経過が改善します 無グルテン食により 胃腸症状は改善し 抗体価は数ヵ月~数年以内に正常化し 小腸粘膜の組織学的改善も促されます 但し 少量のグルテンでも 再摂取すると再発するため 生涯にわたって厳格な無グルテン食治療を行う必要があります 約70%の患者さんは 無グルテン食を開始して2~4週間以内に 症状の改善がみられますが 組織学的な完全寛解が得られるには数年かかることもあります 一般に 90%以上の患者さんはグルテン除去で改善します しかし10%の患者さんは改善せず 不応性セリアック病もしくは不応性スプルーと呼ばれ 難治性の場合は ステロイド 免疫抑制薬などにより粘膜の炎症を鎮静化します @グルテンフリー食による食事療法のデメリット グルテンフリー食は高価で 通常の食物の2倍もします また グルテンが ソース 調味料 薬の基剤などに含まれていることがあり 見落とされてしまうことがあります
一方 食物繊維やビタミンB類 亜鉛 鉄 マグネシウム カルシウム ビタミンD B12 葉酸 などが不足しやすく 炭水化物や 中性脂肪 LDL-Cなどの脂質が 相対的に増えるため 便秘・肥満などが起こりやすくなります <予後 合併症> T B細胞リンパ腫 非ホジキンリンパ腫を合併する率が 2~4倍と高いですが 死亡率は高くありません 長期にわたり未治療だと 癌 悪性リンパ腫 小腸新生物 中咽頭癌 原因不明の不妊 骨粗繧症 骨折 などのリスクが高まります
高橋医院