セリアック病の病態について説明します

セリアック病では
小麦タンパクのグルテンの関連成分に対する反応により
腸粘膜に組織学的損傷が生じますが
その機序として以下のことが推定されています

@自己免疫応答

セリアック病では
HLAのDQ2 DQ8を有する人が多いことを解説しましたが
抗原提示細胞に発現するDQ2 DQ8が
グルテンのグリアジンの分解産物のグルタミン酸を
抗原として提示します

この抗原提示により免疫応答が惹起され
グリアジンに特異的なCD4+T細胞が活性化し
IFNγやTNFαを産生し
異常な自己免疫反応が起こり粘膜炎症をきたします

自己免疫応答について説明する図


@自然免疫反応

細胞傷害性の
腸上皮問リンパ球(intraepithelial lymphocyte:IEL)が関与する
腸上皮細胞の破壊(自然免疫系の異常)により
絨毛萎縮に至ると推察されています

TLR2 TLR4を介してグリアジンが腸上皮細胞を傷害すると
IL-15を介してIELが活性化され
ナチュラルキラー様受容体NKG2Dの発現を亢進し
これが上皮細胞のMHC class l polypeptide related sequence A(MICA)
やCD94などの非典型的なclass l分子の発現を認識して
自己抗原認識能を低下させ 上皮細胞をさらに傷害します

自然免疫反応の異常について説明する図

@粘膜透過性の亢進

グリアジンがケモカイン受容体CXCR3-MyD88依存性に
腸粘膜上皮細胞の結合分子ゾヌリンの分泌を亢進させると
腸粘膜の上皮細胞のタイトジャンクションが緩くなり
粘膜透過性がさらに充進します

腸管内でのタンパク質の分解も上手くされないので
大きな分子のまま粘膜内に侵入してしまい
免疫反応が起こりやすくなります

粘膜上皮の破壊が進むと
グリアジンペプチドが過剰に腸管粘膜内に侵入して
粘膜免疫の場へ大量に輸送・提示されるので
そこで過剰な免疫反応が起こってしまうのです

粘膜透過性の亢進について説明する図

また 腸細胞の管腔側に異常発現しているトランスフェリン受容体によって
グリアジンが管腔内から粘膜下層側へと
細胞内での分解を免れて素早く輸送されることも
関与していると考えられています

高橋医院