甲状腺疾患

甲状腺疾患

甲状腺疾患とは

健康診断などで、「喉が腫れているから、甲状腺機能を調べた方がいいですよ」と指摘され、当院を受診される女性患者さんは数多くおられます。
甲状腺は喉にあり、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンには、身体の新陳代謝や交感神経を活性化して、体を元気にさせる働きがあります。
しかし、免疫反応が自分の臓器に向かって働いてしまう自己免疫反応が甲状腺で起きると、甲状腺疾患が発症してしまいます。自己免疫反応は女性に起こりやすいので、甲状腺疾患の患者さんは女性が多いのです。
自己免疫反応により甲状腺機能が亢進する病気が「バゼドウ病」、機能が低下する病気が「橋本病」で、ともに代表的な甲状腺疾患です。

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)

甲状腺を活性化する自己抗体(TSH受容体抗体:TRAb)が体内にできるため、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、新陳代謝が促進され過ぎる病気です。
30歳代の患者さんが過半数を占めますが、20歳代の患者さんも少なくありません。精神的ストレスが発症に関与するとされています。
異常に汗をかく・暑がる・寝ていても動悸がする・手の指先が細かく震える・痩せる・排便回数が増える・目が飛び出る・落ち着きがなくなり精神的にイライラするといった症状が見られます。

橋本病(甲状腺機能低下症)

甲状腺ホルモン成分に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体:TgAb)、甲状腺ホルモンを作る酵素に対する自己抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体:TPOAb)が体内にできるため、甲状腺ホルモンの分泌量が減り、新陳代謝が低下して身体機能も全体的に低下する病気です。
甲状腺疾患の中で最も頻度が多く、統計上は女性の10~30人に1人がこの病気を有するとされています。40歳以上の患者さんが60%を占めます。
首のあたりが腫れる・全身がむくむ・体重が増える・皮膚が乾燥する・寒がりになる・無気力になる・手足がしびれるといった症状が見られます。

甲状腺疾患の診断と治療

診断

血液検査で甲状腺ホルモン(FT4、FT3)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、自己抗体(TRAb・TgAb・TPOAb)を測定すれば、おおよその診断がつきます。
バセドウ病ではFT4、FT3が上昇し、TSHが低下します。橋本病ではFT4、FT3が低下し、TSHが上昇します。
甲状腺そのものの慢性的な変化の評価のため、甲状腺エコー検査を行うこともあります。

治療

バセドウ病では、甲状腺ホルモンの合成と分泌を減らす薬(メルカゾール・チウラジール・プロパジール)を内服します。1日に3~6錠から開始し、甲状腺ホルモンの値を見ながら徐々に減量していき、一定量の維持量の内服を継続します。
甲状腺ホルモン、TSH、TRAb値の動きを見ながら、内服を止められるか判断しますが、約半数の患者さんは2年間程度の内服で治療を終了することができます。しかし、内服治療が上手く効かないときは、放射線ヨード治療や外科手術を考慮することになります。

橋本病では、足りないホルモンを補ってあげるために人工合成した甲状腺ホルモン製剤(チラージンS)を内服します。最初は少量ずつ服用し、甲状腺ホルモン、TSH値の動きを見ながら徐々に増やし、その人に合った維持量を決定します。
単に足りないホルモンを補充しているだけなので、バセドウ病と異なり長期間の治療(基本的には一生飲み続ける)が必要となりますが、薬はもともと体内にあるホルモンと同じ成分なので、長期にわたり服用しても副作用は心配ありません。

甲状腺疾患のトピックス

甲状腺疾患と妊娠・出産

昔はバセドウ病になると妊娠・出産ができないと言われていましたが、今はそんなことはありません。バセドウ病でも橋本病でも、治療により病気がきちんとコントロールされていれば、普通の妊娠や出産ができますので大丈夫です。また、妊娠中の甲状腺治療薬の服用が胎児に悪影響を及ぼすことはありませんし、授乳も可能です。
ただし、治療されていないバセドウ病や橋本病では、流産・早産・妊娠中毒症の危険性が増します。妊娠を希望される方は専門医を受診され、的確な診断と治療を行い、妊娠中も継続して治療を行うことが大切です。
また、妊娠および出産により母体のホルモン環境が変わりますから、その影響で妊娠中や出産後に、一過性にバセドウ病や橋本病の病気の活動性が変化することがあります。ですから妊娠中から出産後まで、継続して専門医による経過観察を受けられることをお勧めします。

甲状腺疾患とヨード

甲状腺ホルモンは、タンパク質の基本骨格にヨウ素(ヨード)が結合して作られます。ヒトの体内でヨードが必要とされるのは甲状腺だけですから、昆布やわかめなどの海産物を食べると、その中に含まれているヨードは甲状腺に集積します。
大人が1日に必要なヨードの量は0.13mgとわずかですが、ヨードは昆布5gに10mg、わかめ5gに0.5mg含まれています。食物のなかでは圧倒的に昆布のヨード含有量が多いのです。
甲状腺に異常がない方が大量のヨードを摂取しても問題ありませんが、橋本病の患者さんがヨードを摂りすぎると機能低下が増悪することがありますから注意が必要です。普段の生活でのヨードの摂りすぎにより、甲状腺機能低下が生じることもあります。こうした過剰なヨード摂取による甲状腺機能低下は、ヨードの摂取をやめれば自然に元に戻りますから心配ありません。
バセドウ病の患者さんは、特にヨード摂取の制限をする必要はありませんが、過剰な摂取は避けた方が賢明だと思われます。
なお、ヨードはイソジンなどのうがい薬にも含まれていますから、甲状腺疾患の患者さんは過度のうがい薬の頻用は控えられた方が良いです。

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