太らなくても糖尿病になってしまう話から 
睡眠の異常と糖尿病の関連
慨日リズムが形成される機序 
その乱れと食事パターンと肥満の関連
などについて説明してきましたが


不眠により肥満 糖尿病が生じる機序の説明

今や糖尿病 肥満・脂質異常症だけでなく 
高血圧やがんも
慨日リズムの乱れに関連することが明らかにされています


高血圧の患者さんの約30%は
不眠を訴えておられますが
健康な人でも睡眠時間が短くなると
高血圧になりやすくなります

睡眠時間が5時間未満の人は
それ以上寝ている人に比べて

1.32倍高血圧になりやすく

狭心症や心臓発作になるリスクは
2倍以上高くなります

特に睡眠の質の低下が
大きな問題とされています

体内時計の乱れにより 高血圧 心血管疾患が起きる機序の説明

夜型生活・夜勤シフトワークなどにより
概日リズムに狂いが生じてくると

交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかず
本来は夜間に活動が鎮まる交感神経が
夜でも高ぶり
以前ご紹介した危険な早朝高血圧に
なりやすくなります

またアルドステロン産生の概日リズムの乱れも
高血圧発症に関与します

時計遺伝子はアルドステロンを作る酵素の量の
日内変動を制御していますが
概日リズムの乱れによりこの制御に異常が生ずると
アルドステロン産生量が増して
高血圧になると考えられています

また概日リズムの乱れは 
以前ご紹介した食塩感受性も亢進させるので
高血圧になりやすくなると考えられています

このように概日リズムの乱れは 
糖尿病 肥満 脂質異常症 高血圧といった
全身の動脈硬化を亢進させる病気の
発症進展に関与することが明らかとなり

ひいては
心筋梗塞や脳血管疾患の発症につながるリスクが
大きいことから

概日リズムの乱れの制御が
非常に重要と見做されています

体内時計の乱れが ホルモン分泌 自律神経調節の乱れを介して糖尿病 高血圧を起こさせる機序の説明

睡眠不足 睡眠障害が生命予後を悪化させる機序の説明

睡眠不足を侮ってはいられません

また概日リズムの乱れ
特に深夜勤務を含むシフト勤務と発がんの関連が
報告されています

日本ではシフト勤務で深夜業務をされている方は
20%ほどおられるそうですが

シフト勤務による健康リスクとして
*勤務開始後早期に現れる睡眠障害
*勤務開始後しばらくしてから現れる糖尿病 肥満
*勤務が長く継続した後に現れる循環器疾患

が認識されていましたが

晩期に現れるリスクとして

男性では前立腺がん 
女性では乳がん

が注目されています

10年以上にわたり深夜業務を含むシフト勤務をしていると
シフト勤務をしていない人に比べて
男性の前立腺がん発生リスク 
女性の乳がん発生リスクは
それぞれ約3倍高いと報告されました

夜勤勤務者の前立腺がん発症リスク
夜勤勤務者の乳がん発症リスク

上が前立腺がんの発生リスク 
下が乳がんの発生リスクです

この傾向は世界共通で
デンマークでは20年以上のシフト勤務者の乳がんは
労災扱いです

シフト勤務による概日リズムの乱れにより

*がん細胞増殖抑制作用を有する
 メラトニンの分泌が低下すること

*前立腺がんや乳がんの発症に関わる
 性ホルモンの分泌制御が乱れることが

発がんに関与するのではないかと考えられています

このデータを初めて見たときは驚きました

日本ではまだ認知度は低いようですし
労災云々のレベルでは検討されていませんが
社会全体で考慮 対処していかなければならない
重要な問題だと思われます

シフト勤務を長期間続けられている方は 
がん検診をこまめに受けられることをお勧めします

睡眠障害と糖尿病の関連を契機に

*概日リズムの仕組み 

*現代社会における概日リズムの乱れ

*その乱れと生活習慣病 がんとの関わり

について解説してきましたが

書き手にとっても初めて知ることが多く
本を数冊読み とても良い勉強になりました

今回ご紹介したことが
読み手の皆さんの健康管理の参考になれば嬉しいですし
当院での日々の診療にも
充分に生かしていきたいと考えています
高橋医院