夏のラマダン 健康は大丈夫?
朝食べずに夜たくさん食べると太る! とご紹介しましたが ここでふと頭に浮かんだのが ラマダン ラマダンはイスラム教の重要な宗教行事のひとつで イスラム暦の9番目の月 経典コーランの内容が 預言者ムハンマドに啓示された月に 1か月間 毎日 日の出から日没まで 食べ物と飲み物を一切断つ修行です 重い病気の人や妊婦さんを除いて 原則的に全てのイスラム教徒が 参加しなければなりません 初めてラマダンについて知ったとき どうしてそんな修行があるのか とても不思議に思いました 少し勉強したところによると この断食は 参加する人が自己犠牲の精神 飢えた貧しい人への共感 質素さの大切さ などを学ぶ機会で 1か月続けることにより 世俗的な欲を捨て 神への奉仕や献身に没頭することを見つめ直す 年に1回 信仰の意義を再認識する そんな自己鍛錬の機会として 行われているようです ラマダン期間中は 夜明け前に軽食を食べてから 日没までは一切の飲み食いをしない その代り 日没後に家族や友人が集まって ごちそうをたくさん食べる うーん でも 信者さんにとっては余計お世話かもしれませんが この食事パターンは 時間栄養学的にはデブのもとですよね 糖尿病傾向があった日本人の方が イスラム教徒になられて ラマダンに参加したら太ってしまい 本格的な糖尿病を発症されたという話を 聞いたこともあります 興味があったので ちょっと文献サーチしてみたら 驚いたことに ラマダン後に糖尿病や脂質異常症になるというレポートは ほとんどありませんでした 多くのレポートが ラマダン中にはむしろ 体重 コレステロール 中性脂肪は減少して体に良いが 1か月ほどで全ての値がラマダン前の値に戻ってしまう と報告しており インスリン感受性の改善や 酸化ストレスの軽減も認められる というレポートすらあって びっくり! 1か月間限定なら大丈夫なのでしょうか? でも アラブ首長国連邦・UAEでは 人々がラマダン期間中に 夜の過食により肥満になる傾向が強いので ラマダン中に減った体重1Kgにつき 1gの金を賞品として供与するという ラマダン減量キャンペーンをやっているそうです そんなキャンペーンをやるくらいだから 本当は太る人も多い? 実際のところ どうなのでしょう? ちなみに 糖尿病で経口剤を飲まれている患者さんは ラマダン期間中の昼間に絶食するために 低血糖状態で薬を飲むことになり 深刻な低血糖発作が起きてしまうことが問題でしたが 以前に紹介したGLP-1アナログは 血糖が高いときしか作用しないので この薬で治療している患者さんは ラマダン中に低血糖発作を起こさないという なかなか興味深いレポートも何篇かありました なるほどねえ さて ラマダンはイスラム暦(太陰暦)に基づているため 太陽暦では実施開始日が毎年11日づつ早まります ですから 夏にラマダンのときもあれば 冬にラマダンのときもある 今年は6月18日から行われています 今はまさにラマダンの真最中 イスラム教徒の患者さんに聞いたことがありますが 夏は日の出の時間が早く日没の時間が遅いので 断食期間の昼間が長い さらに暑いので水を飲めないのは 体にこたえるそうで 冬のラマダンより夏のラマダンの方が 体力的にはかなりつらいそうです 今年のようにラマダン期間に夏至をはさむ年は さぞかし厳しいのでしょうね そういえば 先日パキスタンを熱波が襲い ラマダンで夜の消費電力が大幅に増加したために 大規模停電となり 空調が効かなくなってしまい多くの方が亡くなった という悲しいニュースを聞きました ラマダンにまつわる色々なお話は 興味深いのですが 正直なところ 実感するのが難しいですね 暑いさなかの断食 水も飲まない しかもそれがこの時期に1か月間毎日続くのだから すごく大変なことだと思いますが うーん でも どんなに大変かリアルに想像するのは やっぱり難しい せめて 世界には今現在 こうした修行をされている方々がおられる ということを認識したいですし ラマダンに参加されている方々が 良好な健康状態を保たれることを お祈りしたいと思います それにしても 月並みな表現で恐縮ですが 世界は広いです、、、
高橋医院