都内でりんご病の感染警報が発令されましたので 
ちょっと解説します

東京都福祉保健局は6/25日付で
6/15~6/21の1週間における
伝染性紅斑(りんご病)の患者報告数が
都の警報基準を超えて大きな流行になっている
報道発表しました

保健所単位での定点あたりの患者報告数が
1週間に2人を超えると警報開始になり

警報レベルにある保健所の管内人口の合計が
都の人口の30%を超えると
都の警報基準になります
(正直 ちょっとややこしいですね:苦笑)

リンゴ病の患者数の経時的変化を示すグラフ

赤の太線が今年の患者さんの数
オレンジ色の線が前回流行した2011年のときの患者さんの数です

それ以外の年と比べて明らかに多いのがわかります


6/15~6/21の1週間で警報レベルに達した保健所は
台東 荒川区 練馬区 足立 八王子市 南多摩 多摩立川 多摩府中
の8か所で

各保健所管轄内の人口の合計が総人口の30%を超えたので
警報発令となりました

都内のリンゴ病患者発生地域を示した地図

赤やオレンジのエリアが感染が多いところですが 
幸い中央区での感染はまだ少ないようです


<りんご病とは?>

りんご病の正式名称は伝染性紅斑と言い

お子ちゃまのほっぺたに
りんごのように赤い紅斑が出現するのが
特徴的な症状の病気です

リンゴ病の漢患者さんの頬の赤い紅斑

小児を中心にみられる流行性の発疹性疾患で
患者さんの70%は6歳以下の小児

特に5~9歳での発症が最も多く 
次いで0~4歳が多く
2歳以下では少ないとされています

小児の感染を調査されているので 
大人の発生状況はわかりませんが
あとで述べるように 
大人でも感染して症状が出ることがあります

ほぼ5年ごとに流行を繰り返し
前回の流行は2011年だったので
来年が流行かと予測されていましたが

予想より1年早く 
今年が大流行になりつつあるようです


<病原体と感染の仕方>

ヒトパルボウイルス19
というDNAウイルスが病原体です

ヒトパルボウイルス19の顕微鏡写真

このウイルスは赤血球の前駆細胞(赤芽球)に存在する
P抗原を介して赤芽球に感染します

ですから 
特殊な貧血などの赤血球造血が亢進している患者さんでは
このウイルスに感染すると造血が停止してしまい
急激な貧血をきたすことがあるので要注意ですが

通常の健康な人では
そうしたことは起こりませんから ご安心ください


ウイルス感染した患者さんの
痰や咳からの飛沫感染 
および接触感染により感染します

飛沫感染の様子
ですから患者さんも周りの人も 
マスクをすることが一番大切ですし

インフルエンザと同様
帰宅時の手洗いの励行が大変重要になります


<特徴的な症状と治療>

ウイルスに感染してから発疹が出るまで
10~20日間の潜伏期があります

感染して7~10日後に
前駆症状(微熱や風邪症状)が見られることが多く

この時期には血中にウイルスがたくさんいて
気道分泌物にもウイルスがウヨウヨしていますから
ヒトに移しやすい 感染力が非常に強い時期です

それからさらに7~10日後に
特徴的な頬っぺたの境界明瞭な紅斑が
出現してきます

その後に手足やお腹・お尻に
網目状・レース状・環状の発疹が見られるようになります

この時期には
血液中にはほとんどウイルスはいなくなっているので
感染力は弱い


つまり
伝染性紅斑が疑われる特徴的な発疹が出る時期より前の
前駆症状の時期

まだ周囲の人が伝染性紅斑と認識する前に 
人にうつす可能性がいちばん大きいわけですから
そういう意味では厄介です

ただし
発症してもそれほどひどい症状が現れるわけではなく
発疹も1週間程度で消失し 自然経過で改善していきます

まれに症状が長引いたり
一度消えた発疹が
短期間のうちに再出現することもありますが
それほど心配する必要はありません

感染しても症状が出ないまま治ってしまう
不顕性感染も20~30%あると報告されています


インフルエンザと異なり
ワクチンはまだできていません

治療も特別なものはなく
発熱や頭痛に対する対症療法を行います


発疹が出たときには 
既にヒトへの感染力はないので 
隔離したりする必要はありません

逆に先ほど述べましたように
感染力の強い患者さんは特徴的な症状を示さないので
実際的に二次感染を予防することは困難です

大人では 感染した子供との接触が多い
20~30歳代のお母さんの感染がいちばん多い

子供のように頬っぺたが赤くなることはなく
最初に38℃以上の高熱 倦怠感が出ることがありますが
3日ほどで改善します


重症な場合は
関節炎や頭痛の症状がひどくなり
手の指が曲がりにくい 
膝の関節が痛くて階段が昇れない 
うまく歩けないといった事も起こり得ますが
1~2日で自然に回復します

まれに3~4週間 
良くなったり悪くなったりを
繰り返すことがあるようです

この病気は麻疹やおたふく風邪と同じで
一度感染すると二度と罹りません

ですから 大人の約50%は
子供のときに罹って抗体を持っていると言われています

抗体を持っている人は感染しませんから大丈夫です


<妊婦さんはご注意ください>

大人で心配なのは 妊婦さんへの感染です

妊娠早期(20週未満)で感染すると
お腹の赤ちゃんに感染して
赤ちゃんが病気になることがあります

先ほど説明しましたように
このウイルスは赤血球の前駆細胞に感染しますから
胎児の赤血球が減少して貧血になり
ひどい場合は胎児水腫という状態になり
亡くなってしまうこともあり得ます

妊娠20週を超えると そうしたリスクはぐっと減ります

妊婦への感染の注意を喚起するポスター

ですから
*妊娠の可能性のある方
*妊娠して間もない(20週未満)の方 
*ご家庭に妊婦さんがおられる方は
充分な注意が必要です

外出時にはマスクを必ずして
帰宅時には手洗いを励行してください

家族や同僚などから感染するリスクが
いちばん高いので

妊婦さんは感冒様症状がある人には近づかない
感冒様症状がある人は
妊婦に近寄らないことが大切です


ご自分がパルボウイルスに対する抗体を有しているかは
簡単な血液検査でわかりますから
心配な妊婦さんは抗体の有無を
確認されておくのも良いでしょう

抗体陽性ならば感染の心配をする必要はありません

木になるリンゴ


この時期は
暑くなってきたにもかかわらず 
意外に風邪の患者さんが多い

電車や職場の空調が効きすぎて
風邪をひかれてしまうようです

通勤中や職場でも 
羽織れるものが1枚あると重宝します

そして ご家庭や職場にお子さんがおられる方は
念のためにりんご病にもお気をつけください
高橋医院