急性膵炎
膵臓の病気で多いのが 急性膵炎・慢性膵炎ですが 今日は 急性膵炎 について解説します <急性膵炎になりやすい人> まず 以下にあげた項目にあてはまるかどうか 自問してみてください *男性 *食事の時間が不規則 *太っている *睡眠不足でストレスが多い *タバコを吸う *脂肪の多い食事が好き *お酒が好きで毎日飲む *健診で中性脂肪が高いと言われた *糖尿病にかかっている *胆石がある あてはまる項目数が多いほど 急性膵炎になるリスクが大きいので要注意です <疫学> 急性膵炎は 年間5万7千人あまりの患者さんが発症している病気で ここ20年間で約4倍に増加しています 男性優位で 女性より2倍多く 50歳代をピークに 30~70歳代の方が多い 男性は50代 女性は70代が中心です <自覚症状> 典型的な自覚症状としては *上腹部の激しい痛みで始まり 次第に痛みが強くなり 数時間後にピークとなる ・みぞおちから左上腹部にかけて痛む ・背中を丸めて前かがみになるとよくなる *上腹部の背中側の痛み 左肩放散痛も 比較的特徴的な症状 *痛みと同時に 吐き気や嘔吐を伴うことが多く見られる *飲酒 脂ものを食べたあと 数時間で起こることが多い *発熱 *食欲不振 腹部の張った感じ *軟便 下痢 などがあります <原因> 原因としてはアルコールが多く 男性では アルコール42.7% 胆石19.2% 原因不明12.4% 女性では 胆石35% 原因不明25.1% アルコール9.1% の順番になっています <病態> 何らかの要因により *膵管の内圧が上昇したり *膵液分泌が過剰になったり *感染した胆汁が膵管内に逆流したりすると タンパク質分解酵素が 膵管内で活性化してしまい 膵臓自体を消化してしまうので 膵炎がおこります 自らの酵素が 自らの組織を溶かしてしまう これが急性膵炎の正体です <診断> 血液検査で アミラーゼ リパーゼ エラスターゼ1などの膵酵素が高く 腹部CT検査や超音波検査で 膵臓に急性炎症に伴う異常があると 急性膵炎と診断されます <治療と予後> 多くの場合は 入院してベッド上安静とし 飲食を禁止し 鎮痛剤・たんぱく分解酵素阻害剤・輸液などで治療します 予後は軽症の場合は比較的良好ですが 再発率は20.3%で 約半数が慢性化します アルコール性の再発率は32.4%で 慢性化率の頻度も高い 前回も解説しましたが 急性膵炎後に断酒をしないと 再発率 慢性膵炎移行率 糖尿病合併率 が有意に高いので 注意が必要です <重症膵炎> 重症度が高い急性膵炎は重症膵炎と呼ばれ 急性膵炎の30%あまりに認められます ショック症状として 意識の低下・血圧の低下・頻脈・チアノーゼなどが見られ 心臓 肺 腎臓など重要な臓器が 一度に障害を受ける多臓器不全を呈し 死亡する場合もある(死亡率は10%程度もある) 大変危険な病態です そんな命にかかわる状態にならないようにするために 長くお酒を飲んでいる人が いつも以上に大量飲酒して 上記の症状が出て調子が悪くなったら 早目に受診してください
高橋医院