慢性膵炎
今日は 慢性膵炎の解説をします <線維化が徐々に進行する病態> 前回ご紹介した急性膵炎は 膵管が詰まって 膵臓が自己消化されてしまう病気ですが 慢性膵炎は 膵臓の細胞の破壊が長い時間をかけて 少しずつ繰り返されることにより 膵臓の内部が 徐々に線維化して固くなり 形が変形したり 消化液を十二指腸に流す主膵管が狭くなったり 閉塞したりしてきます 臓器の内部で炎症が繰り返されて 線維が増えてくるのは アルコール性肝障害でも見られましたが 肝臓と膵臓で決定的に違うのは 膵細胞は肝細胞と異なり 炎症が治まっても再生しないことです <病期の進展と臨床症状の変化> そのため 最初のうちは外分泌 内分泌機能が 保たれていても(代償期) やがて線維化が進んで 膵細胞が機能しなくなると 膵臓の外分泌 内分泌機能が 破綻してしまいます(非代償期) そうなると 数か月も続いた腹部や背中の鈍い痛みは むしろ改善してきますが 代わりに外分泌機能の低下による 体重減少・食欲低下・全身倦怠感などの症状 脂肪便(水に浮く 臭くて白っぽい未消化の軟便)や下痢 が見られるようになります 膵臓から消化酵素が分泌されないので タンパク質や脂肪が消化されないために こうした症状が出てきてしまいます また インスリンが分泌されないので 口渇・多尿などの糖尿病の症状が 出現してくることもあります <疫学> 慢性膵炎の患者さんは 全国で4万7千人ほどおられ 15年前と比較すると倍増しており 男性に多いものの 女性の患者さんも増えています <原因> 原因としては 先に解説したように アルコールが50%以上で(特に男性) 急性膵炎から慢性膵炎に移行する場合が多い それ以外の原因としては 胆石 自己免疫性膵炎などがあります 慢性膵炎の80%が喫煙者で 喫煙は大きなリスクファクターなのが特徴です <治療と予後> @治療 腹痛には 痛み止め 再発・進行予防には たんぱく分解酵素阻害剤 外分泌機能の補充には 消化酵素薬 内分泌機能低下である糖尿病は インスリン治療 などが行われます @予後 予後はなかなか厳しく 死亡率は健常人の1.55倍高い 特に禁酒できないアルコール性は予後が悪く アルコール性膵炎は 非アルコール性膵炎より有意に死亡率が高くなります また 膵臓がんには健常人の8倍もなりやすく 寿命は健常人に比し 男性で10歳 女性で16歳も短いようです 日常生活では 断酒はもちろんですが 脂分の多い食事を控えたり 場合によってはインスリンを自己注射したりする必要もあり さまざまな面で制約がかかり 生活の質が大きく低下してしまいます ですから 慢性膵炎にならないようにする注意が必要です 上に述べたように 多くの場合 原因は 急性膵炎後のアルコール持続飲酒による慢性化なので 先回もご説明したように アルコールで膵臓を傷めた方は それを機会にすっぱりと断酒していただけるよう お願いします
高橋医院