書き手は 
普段はほとんど地上波のTVは見ませんが
BSの紀行番組や特集番組はよく見ます

先日 日曜のお昼にTVをつけたら
BSの番組表に
気になるタイトルを見つけました

「妖しい文学館」

NHKのBS特番は昔から贔屓にしていますが 
最近は色々と面白い企画番組を
制作していると思います

ちょっと前まで放送していて
お気に入りだったのは 
「世界入りづらい居酒屋」

世界各国の街のジモピーしか入れないような
良くも悪くも癖のある居酒屋を見つけて
その店のオーナーや常連客の交流を描きます

NHKでこんな放送をしていいの? 
という内容が盛りだくさんで 
お気に入りでしたが(笑) 

この番組は稿を改めて紹介するとして


さて 妖しい文学館

谷崎潤一郎の春琴抄 をテキストにして

大阪の女子高の演劇部員が 
その一部を朗読しながら

スタジオでゲストたちが 
春琴抄や谷崎文学について語ります

番組の画像

これが すごく面白かったのですよ!!

まずゲストの面々がすごくて

渡部直己 島田雅彦 
山本容子 平野啓一郎 鈴木杏

書き手は濃い人たちの放談を聞くのは 
嫌いではありません(笑)

ゲストたちが放談している様子

書き手にとって谷崎は 
興味はあるけれど
いまひとつのめり込むには至らない 
というか のめり込めなかった作家です

陰影礼賛文章読本に記されているような
彼の美意識や価値観には
共鳴できる部分も多いですし

生まれが人形町ということで 
ジモピー的シンパシーもある

でも痴人の愛は 

大人の世界すぎて
精神年齢が幼い書き手には 
ちょっと敷居が高い(苦笑)


そんな谷崎の世界をゲストたちは
ときにロジカルに 
ときにエモーショナルに 
爽快にバサバサと斬っていきます

そして 
彼らのトークの前に挿入される
女子高生の朗読が良い!
(JK好きというわけではありませんよ:苦笑)

大阪のお話しを関西弁で朗読されると
特にイントネーションに 
とてもリアリテイーを感じます


で ゲストたちは主に
こんなテーマについて語っていきました

*盲目の世界が醸し出すエロス

*春琴抄で描かれるSMの世界

*この物語の構成と文章表現法の巧みさ

*谷崎の変態性とオタク性

なんだか 
世の常識派や教育ママたちが
眉をしかめそうな話題ばかりですが
だからこそ面白い!(笑)

視力のない世界のエロス に関しては 
こんなことが語られます

春琴抄を読まれたことがない方のために
簡単に説明すると

主人公の
三味線のお師匠さんの若くて美しい春琴は 
9歳で病で視力を失い 
彼女に仕える4歳年上の佐助も 
話の途中で自らの意思で視力を失います

こうした主人公たちの盲目の世界を 
どうとらえるか?

これはかなり興味深いテーマです

外界からの情報を認知する際の 
視覚の優位性は歴然ですが

外界からの情報認知における五感の割合を示したグラフ

五感が人の精神活動に与える影響に関しては
視力の優位性を敢えてネガティブに評価し
視覚以外の嗅覚や触覚をポジティブに
評価することが少なくない

端折って言うと
視覚以外の感覚の方が 
より人間らしい感覚である 
というスタンスです

ゲストたちもご多聞に漏れず 
視力を失ったが故に
触覚や嗅覚に頼らざるを得ない世界について
肯定的に語っているような気がしました

「外からの視線を過剰に意識するあまり 
 自意識が高まるのではないか?」

「視力のない五感の世界の方が 
 情を強く感じることができるのでは?」

「それがエロスに繋がっていく?」

「何かが欠けている
 ものが持つ美を きれいに描いている」

こうした意見は様々な場面で
よく見聞きしますし
なんとなく納得できるけれど

でも これは 
視力がある人の勝手な想像に過ぎない
可能性があります

書き手も視力がありますから 
本当のところはわからない、、、

春琴抄の文庫本

でも ゲストたちが番組の後半で

「谷崎は
 盲目の世界を暗黒の世界とは描かずに 
 ぼんやりとした薄暗い世界として描いている
 それは 彼が陰影礼賛で
 ポジティブに評価している世界ではないか?」

「差別される世界を 力強く肯定的に表現していて 
 そこは素晴らしい」

と語っていたのは とても印象的でした

ちなみに
春琴抄陰影礼賛は同じ年に書かれたそうで
だから余計に
暗さという視点から 
両者を関連付けて語るスタンスなのでしょうか?

長くなりそうなので つづく、、、


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