多くの方が膵臓の病気でいちばん心配されるのは
膵臓がん だと思います

自覚症状が出にくく 
発見されたときには既に進行していることが多い
といったことが喧伝されているため

まわりに膵臓がんになられた方がおられたりすると
心配になる

当院にもそうした相談で来院される患者さんが
たくさんおられます

<疫学>

膵臓がんの患者さんは 増えています

2014年のがん罹患率では
男性では 第8位
女性では 第6位
ですが

男女別 臓器別のがんの頻度を示したグラフ


死亡率となると(2013年)
男性では 第5位
女性では 第4位
となり 死亡率も高いのが特徴です
オレンジ色の線が膵臓がんです

臓器別のがんの死亡率


<種類と特徴>

膵臓がんには 何種類かありますが

いちばん多いのは 膵管の上皮から発生するがん
全体の80~90%を占めます

このタイプは
症状が現れにくく
周囲の臓器に転移しやすいので予後が悪い

インスリンやグルカゴンなどの
ホルモンを産生するがんもありますが

これらは良性のものが多く
悪性でも膵管上皮がんに比べると予後が良い

稀なものとして粘液産生性膵がんがありますが
こちらも比較的予後が良く
3cm以下の単発なら それほど心配はありません

発見されたときに既に進行している場合が多い
*初期段階でみられる自覚症状が少ない
*周囲の臓器に浸潤しやすいので
 手術で完全に切除しきれない
*周囲にリンパ節や血管が豊富なので
 遠隔転移しやすい
といった理由によるものです

ですから 早期発見を心掛けることが大切です
そのために有用なのはMRIなどの画像診断です


<発症リスク>

発症リスクとしては

*喫煙者
*高齢者
*家族に膵臓がんの方がおられる 
*肉 動物性脂肪が好き
*高度の肥満
*運動不足

などがあるので あてはまる方は要注意です

特に気をつけないといけないのは
慢性膵炎の方 糖尿病の方です

健常人に比べて
慢性膵炎の方は10-20倍 
糖尿病の方は8倍も 
リスクが高くなります

膵臓がんの25%の方が糖尿病を合併しており

糖尿病発症後3年以内に
1%の方が膵臓がんになるとされています

また 糖尿病の悪化は 
重要な膵がんのサインです

糖尿病の治療中に 
生活習慣や体重などの変化がないにもかかわらず
血糖コントロールが悪くなった場合は 
膵がんの発症を疑わねばなりません


<自覚症状>

自覚症状を認める方は全体の75%しかありませんが
進行してくると

*上腹部痛(32%) 
*体重減少(53%) 
*黄疸(19%)

がみられます

特に上腹部痛は最も多く見られる症状で
食事とは関係なく
背中の痛みや夜中の痛みなどが激しく続くのが
特徴的です

膵臓がんの症状


<診断>

膵がんが疑われた場合は

血液検査では
CA19-9 CEA CA50などの腫瘍マーカーを測定しますが
これらの値が上昇しているときは
既に進行している場合が多い

ですから リスクの高い方 特に慢性膵炎や糖尿病の方
定期的に腹部エコー 造影CT MRCPなどの画像検査を行い
2cm以下の小さな段階での発見を心掛けることが大切です

すい臓がんのCT画像

膵臓がんを過度に心配される必要はありませんが

特にハイリスク群の方は 
定期的な画像検査を受けられることをお勧めします





高橋医院