もう限界?
前回に続き 経済の話を続けますが 既にこのブログで何回か話題にした エコノミストの水野和夫さんが書かれた 「資本主義の終焉と歴史の危機」という新書は 書き手にとっては とても刺激的な面白い本でした いちばん興味深かったのは 資本主義が成立し発展する過程が 世界史の流れの中で解説されていることで へー そうなのか~ とか なるほど~ と どのようにして資本主義が生まれ育ってきたか 知ることができました 特に 中世から近世にかけてキリスト教社会が 金利という概念や 資本主義的な考え方と いかに対峙しどのように折り合いをつけていったか を詳しく知ることができて とても勉強になりました さて その水野さんは 現代の資本主義を評価して 今の世の中には 栄華を極めた資本主義がさらに発展する余地はない と述べられています 以下 水野さんの論旨と書き手の感想をまとめると 資本主義が機能するためには 「中心」と「周辺」のふたつの世界の構成が必要で 「中心」が「周辺」を搾取することにより 経済的利益を得て さらに資本を自己増殖させて ますます富んでいくことができた この「中心」と「周辺」という概念は 書き手にとってはとても新鮮で なるほど~ と思いましたね 近代や資本主義を形成する 基本的な価値観は「もっと成長すること」で そのために人々は 「より遠くへ より早く より効率的に」 を実現する方法論を開拓して 地理的空間を広げることにより 常に「周辺」を作り出し そこから搾取してきた 確かに 成長こそがいちばん重要というコンセプトは 高度成長時代を生きてきた書き手には とても納得できます 「周辺」とは 新大陸であり 植民地であり 発展途上国で 当時の「中心」だったヨーロッパは 領土も資本も あらゆるものを世界から掻き集める「蒐集」を 全精力を注いで行って発展してきた まさに 16世紀のスペイン・ポルトガルによる新大陸の発見 その後のオランダやイギリス等による世界の植民地分割 こうした世界史の出来事が 資本主義の発展と密接に繋がっているのがわかります そして 「蒐集」こそが 資本主義精神 そのバックボーンとなるプロテスタントの精神を形成する 根本的な欲望であり そして社会は より多くのものを「蒐集」するために 躍起になって生産力を高める努力をして その結果として 多くの「中間層」が豊かさを享受できるようになり そのおかげで民主主義社会の社会秩序が 維持できるようになった という興味深い視点は 前回もご紹介しましたが これも書き手にとっては とても新鮮で興味深い指摘でした ところが既にアフリカにまで搾取の手が伸びてしまい それまで資本主義を牽引してきたヨーロッパは 地理的に新たな「周辺」を作り上げることが出来なくなった そこで今度は アメリカが新たな「中心」となり グローバリゼーションで世界の金融の垣根を取っ払い 金融工学的技術を総動員して 国内にサブプライム層という新種の「周辺」を作り そこで利益をあげてきたが 2008年のリーマンショックのように 電子金融空間バブルは あっけなく破綻してしまった レバレッジを効かせまくることにより 実体経済よりはるかに巨額のバーチャル経済を作り上げた 電子金融工学の世界には まさに砂上の楼閣的な危うさがあるのは 今にして思うと 当然と思われますが 当時は書き手も含め そうした事実に気づいていない人々の方が 多かったのでしょう だから 大損した人たちがたくさんいた そしてリーマンショック後は 各国の中央銀行による量的金融緩和政策で なんとか盛り返してきたけれど それも今や手詰まりとなり またしてもバブルが弾けそうになっている 今の資本主義は 数年に1回のバブルの精算が 避けられないものになっている 前回のブログで紹介した世界経済の現状が どうして生まれてきてしまったかが とても良く理解できます そして水野さんは 以下のように論をまとめます 今や世界をコントロールしているのは 国家でなく資本であり その資本が迷走しているのが 今の世界であると つまり 成長神話を基本的な価値観とする資本主義は 既に臨界点に達していて もうこれ以上 膨張することはできない いよいよ「周辺」が出尽くしてしまい 袋小路に陥ってしまった 金利は 資本の利潤率を表す指標であるが 先進国の金利が長期にわたり低く留まっており 日本やEUではマイナス金利にまでなっている現状は まさに資本主義の機能不全を示している 経済を不勉強だった書き手は 金利のそうした意味合いついても知らなかったので この点についても なるほど~ と納得した次第ですが では この先世界はどうすれば良いのか? もう成長することは できないのでしょうか? ここまで読んでくると 誰しもがそんな不安を持つと思いますが いったい どうなっていくのでしょう? もう少し この話題を引っ張ります
高橋医院