カンテと義太夫
GOEMON 第2幕は 秀吉により強制的に帰国させられた GOEMONの父のカルデロン神父が 故郷のアンダルシアで 日本に残してきた息子を思いながら バールで酒浸るシーンからはじまります ここで登場するのが なんと フラメンコ! しかも歌い手のカンテは 本場のスペイン人で こぶしが存分にまわります(笑) えっ! と ちょっと唐突な感がなきにしもあらずでしたが 酒におぼれる失意の父の夢に登場する 懐かしき我が子と ふたりで情念たっぷりに踊るフラメンコは なかなか見応えがありました あの子役さん スゴイ! でも どうして歌舞伎にフラメンコなの? と 不思議に思われる方が多いことでしょうが プログラムを見ると このお芝居の原作者の水口一夫さんも 愛之助さんも フラメンコも日本舞踊も 腰を落として足拍子をとるところが似ているし 魂の叫びであるフラメンコも 歌舞伎の元祖・出雲の阿国の念仏踊りも 民衆の喜怒哀楽を表現するという点で 大きな共通点がある と 語られています なるほど~ 大衆芸能のルーツには アナロジーがあるということですね そして そのあと 舞台の上手に義太夫語りと三味線弾き 下手にカンテとギター奏者が相対し 悲しみにくれる父親の胸の内を 切々と歌と旋律で表現した場面は なかなかの白眉でした! 義太夫語りとフラメンコのカンテの コラボレーションなんて よくぞ思いついたものですが 三味線とギターのしらべが 妙にクロスオーバーするところがあり とても興味深かった 以前に見た 日舞とバレエのコラボレーションを思いだしました こういう 異文化の伝統芸能のコラボは 面白いと思います さらに 新興勢力の台頭で人気に陰りが出てきたことに悩む阿国に GOEMONが父親伝来の魂の踊りフラメンコを伝授し ふたりでステップを踏みながら練習する場面に つながっていきます そうか阿国の念仏踊りには フラメンコの要素が隠し味に 仕込まれていたわけね?(笑) このあとの念仏踊りの場面では 女性ダンサー達も登場します 阿国を演じる女形と ホンモノの女性が混じって踊る光景は 女形がいかに女性の動きの特徴を強調しているかが よくわかって 面白かった そしていよいよ 終盤へ GOEMON が見得を切る 有名な南禅寺の山門のシーン ここの演出が 書き手にはとても印象的でした メタルパイプで構成された舞台装置が GOEMONを載せながら 後ろから前へと回転しながらせり上がってきて 正面を向いたところで パイプにつけられた照明から 客席に向って強烈なライトが発せられ 眩しいほどの光の束が 一斉に客席に投げかけられます そして 一呼吸おいて GOEMONの 絶景かな の見得が始まります これには びっくり! 書き手がご贔屓の ロックオペラ ジーザスクライスト・スーパースターの舞台を 彷彿させます! まさか歌舞伎でこんな光景を見るなんて 予想だにしていませんでした ビックリしたし プチ感動もしました さらに秀吉の追手と GOEMON 阿国らによる追走バトル なんと追手もGOEMON達も 1階席 2階席の通路をかけずり回り しかも ありとあらゆる客席出入り口から 神出鬼没に出たり引っ込んだり 書き手が座る席のすぐ脇を GOEMONもお国も追手も 風のように駆け抜けていきました この演出は理屈抜きでホントに面白い! 外連は こうでないとね! さらに 追手を蹴散らすのは 阿国の弟子たちのフラメンコの群舞 さっき着物姿で 念仏踊りを舞っていた女性たちが 今度は妖艶なドレス姿でフラメンコを舞い 追手たちを圧倒します 本当に これでもか! とばかりに 次から次へと 予想外の突拍子もない演出が押し寄せると 感覚がマヒしてきます(笑) そしそしてクライマックスは GOEMONが 友の化身の鳥にまたがり 父が待つエスパニアに旅立つ 今日2回目の宙乗り さぁらばあ~ ふ~るさ~とよ~ そんなセリフとともに 1階から3階までの多くのお客さんに 空中から 艶っぽいアイコンタクトを投げかけながら 愛之助さんは 3階客席奥に 颯爽に消えていきました GOEMONは エスパニアに無事にたどりつくのだろうか? むこうで どんな活躍をするのだろう? 愛之助さんの後ろ姿を見上げながら ふと そんなことを思いましたが プログラムの中で 愛之助さんは 歌舞伎というお芝居は 観ている方の想像力を膨らませるもの と 語られていましたが まさに愛之助さんの思うつぼの反応を してしまいました(笑) それにしても 面白ければ それで良いでしょう? かぶく とは そういうことなのですね はい 充分に堪能させていただきました もちろん カーテンコールでは 客席は全員 スタンデイングオベーション! お隣に座りの方からも 面白かった とご評価いただき ちょっとホッとしました(笑) そうそう 舞台が始まる前に とても背が高いスタイルの良い和服姿の女性が 客席最前列や桟敷席のお客さんに ご挨拶されていましたが なんと 愛之助さんの新妻 梨園の妻デビューの 藤原紀香さんでした ナマ紀香さん 初めて拝見しましたが 小顔で背が高くてびっくり 愛之助さんとは ノミの夫婦ですね!(笑) タニマチと間違えられたことがある書き手には 当然 ご挨拶は ありませんでした(笑)
高橋医院