前回
ゲノム編集の
ヒトの病気の治療への応用の夢を紹介しましたが
その前に解決しなければならない
重要な課題があります

それは 社会への説明と 倫理上の問題 です


<ゲノム編集の 社会への説明 社会の反応>

現在でも 遺伝子組み換え生物

2000年に採択されたカルタヘナ法という
国際的な枠組みを規定した議定書により

厳重な管理がなされ 
自然界から隔離されています
カルタヘナ法の概要











遺伝子組み換え生物が自然界に出て 
野生の生物と交雑すると
生態系が変わってしまうリスクがあるからです

遺伝子組み換え生物により生態系が変わってしまうリスクを警鐘するポスター


遺伝子組み換え生物が 
従来の生態系を変化させてしまうリスク

あまり考えたことがありませんでしたが
確かにそうしたリスクを考えないといけないのですね、、

では
ゲノム編集で作製された畜産物や農産物も
同じように厳しい管理下に
おかれるべきでしょうか?

遺伝子組み換えとゲノム編集は異なる
とする意見があります

不確実な遺伝子組み換えとは異なり
ゲノム編集は正確に遺伝子を編集するので
遺伝子を無差別に変えるリスクは少ない

起こしている現象は
自然界で普通に起きている突然変異と同じことで
他の遺伝子を入れ込んでいるわけではないから
遺伝子組み換えよりはるかに安全だ
という意見です

一方で
たとえそうであったとしても
遺伝子改変の頻度は不自然に多くなるので
突然変異とは異なる
という意見もあります

このあたりは 
未だ結論は出ていません

また 社会への正確な情報伝達が行われないと
ゲノム編集という技術そのものや 
ゲノム編集で出来た作物に対し
人々が感情的になり拒否反応を示されるリスクがあります

現在 社会に流通している
遺伝子組み換え食品(GMO)に対しても
強固に反対する人々がいます

遺伝子組み換え食品(GMO)に反対するポスター
遺伝子組み換え食品(GMO)に反対するデモ

社会的認知が進んでいない
ゲノム編集では尚更です

実際に 一部の人たちは
ゲノム編集で出来た筋肉隆々の牛を
フランケン牛などと呼び拒否しています

筋肉隆々のフランケン牛

ゲノム編集は
なにか人の心にひっかかりを
生じさせる

ゲノム編集で出来た動植物を
抵抗なく食べられるか?

そうした意識や問いが
人々の心の底にあることは
否めない事実でしょう

確かに
ゲノム編集された農作物・畜産物に 
どう対応するか?
意見が分かれるところだと思います

食品として受け入れることが出来るか?
どのような手順を踏んでいれば
安心できるか?

未だコンセンサスが
得られていません

書き手は
畜産農産物への応用には
基本的には許容派ですが

生態系への影響は
本当に大丈夫なのだろうかと
不安に思う点もあります

読み手の皆さんは 
どのように思われますか?


<ヒトへの応用の倫理的問題>

ヒトへの応用は より深刻な課題です

現在の学会のコンセンサスは

体細胞への適応は良いが 
受精卵はダメ

というものです

体細胞は
幹細胞から臓器に分化している細胞で
遺伝子編集を行っても 
世代に遺伝子の変化が引き継がれません

しかし 
受精卵に遺伝子編集を行うと
次世代に遺伝子の変化が
引き継がれてしまいます

それはリスクが大きい というのが 
学会の意見です

体細胞 受精卵へのゲノム編集の影響の違いを示す図

受精卵の
遺伝子改変・ゲノム編集を
行っても良いか?

大きな問題です

倫理的な問題はないのか?
将来 問題が起こらないと言えるのか?

受精卵へのゲノム編集のリスクを警鐘するポスター
受精卵へのゲノム編集によるデザイナーベビー誕生のリスクを警鐘するポスター

この問いは

*人間とは何か?

*人間は 
 その体にどこまで人為的に手を下しても良いか?

という 哲学的な問題を提起しています

長くなりそうなので 次回に続けます

高橋医院