富は海水に似ている
書き手は 大学院で免疫学を学んでいました (学ぶというより遊んでいた?:苦笑) 当時はインターロイキンという リンパ球が産生する ホルモン様物質が同定され始めた頃で 免疫の分野はとても活気づいていました ちなみに 現在ではインターロイキンは 40種ほど同定されていますが 書き手が遊んでいた30年ほど前は まだ数種類しか発見されていませんでした 日本は この分野の研究で 世界をリードする立場にあり そのフロントランナーの研究所のひとつが 今年 文化勲章を受勲された 松原謙一先生が率いられ IL-6の発見者 岸本忠三先生が活躍されていた 大阪大学・細胞工学センターでした 細胞工学 Cell Engineering という言葉は それまで聞いたことがなかったのですが その響きはとても印象的でした 細胞 という単語と 工学 という単語の結びつきが なんだか違和感があるようで それでいて なんとなく先駆的な格好良さも感じて で 長い前振りになって恐縮ですが 書き手がもっと大人になってから(笑) 工学という単語が 別の単語とくっついているのを見聞きして もっと驚いたのですよ! それが 今日のお題の 金融工学 です NHKの 「ザ・トゥルース(真実)世界を変えた金融工学」 という番組を見ました なぜか最初に 吉川晃司(なつかしい!:笑)が出てきて ショーペンハウアーが語ったという こんな警句を紹介します 富は海水に似ている 飲めば飲むほど 喉が渇く うまい導入ですよね!(笑) 金融工学 その響きは 細胞工学よりも もっと違和感があって もっとアヤシイ!(笑) 番組では まず金融工学が何たるかを紹介します 数学 物理学の数式を駆使して 富を拡大して 儲けようとする科学で 現在の金融ビジネスのほとんどの分野で 金融工学が使われており 金融工学の登場により 世界の富は500兆ドルまで 膨れ上がっている 確率論をベースに構築されたもので 株価を単純な数式で表し予測すること を初期の目的としていた 金融工学が出てくる以前の投資は 企業の経営に関する情報を集め そのうえで カン 経験 度胸 で 投資判断をしてましたが 金融工学の登場により その景色が一変してしまい 次々と新しい金融派生商品(デリバティブ)が生まれて 市場は巨大に膨れ上がった そして そのあと 突然 暴走を始めて かってないほどの規模の経済危機を生み出したのは ご承知のとおりです では 金融工学は 誰が いつ どのようにして 生みだしたのでしょう? 1960年代のマサチューセッツ工科大学に エドワード・ソープという 金融工学を生み出した数学者がいました 世界恐慌の時代に子供時代を過ごし 経済的自由の重要性を認識していた彼は 要は 金儲けが好きだった?(笑) 自らの数学的才能を駆使して 確率論により ブラックジャック必勝法を見出し そのアイデアを基に 株価の不規則でランダムな動きを 数学的に表現し予測する試みを始め ウォール街の投資の世界に持ち込んで 巨額の富を得ようとした Beat the Market マーケットをぶっとばせ という書籍を執筆 出版し 従来の投資の重要な参考資料だった 会社の財務状況 経営方針など全く無視し 自らが考案した数式のみを信じて 投資を行う そんな当時としては 破天荒なやり方に 多くのウォール街関係者は 興味を示しませんでしたが 彼の出現を契機に 金融界は 数学者・物理学者が 幅を効かせる世界となりました 彼の業績(?)で注目だったのは 「空売り」という方法を発明したことです 空売りは 今でこそ投資家さんやヘッジファンドさんらが マーケットで巨額の利益を得るために 日常茶飯事的に行われていますが 値上がりだけでなく 値下がりでも儲けようという 空売りのアイデア 書き手は 初めてそのやり方を知ったとき ずいぶんとえげつないことを 考えだした奴がいるものだと びっくりしたものですが なんとエドワード・ソープが 思いついたものだそうで ワラントという 金融派生商品とリアル株の割合を 絶妙に調整する数式を作り上げ 年に20%の利益をたたきだしていたそうです さて ソープが生み出した金融工学 この先 どんな風に暴れていくのでしょう?(笑)
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