これだけ暑い日が続きますし
何人か疑わしい患者さんも来院されていますので
熱中症について解説します

<熱中症ってなに?>

高い気温や湿度
などの環境要因

屋外での激しい運動・労働
などの行動要因

高齢 脱水 糖尿病などの持病
といった身体的要因

これらの要因が積重なり 
上昇した体温が下がらなくなり
頭痛 めまい 筋肉痛などの症状から始まり
ひどい場合には意識障害まで起こしてしまう病態です

その本質は高い体温が下がらないことです


<なぜ熱中症になる?>

人の体は 体温が上昇したら
汗を出して水分を蒸発させ
皮膚の温度を上げて
体温が外気へ逃げるようにして調節しますが

熱中症の病態を解説する図

気温が高い 湿度が高い 
風が弱い 日差しが強い 
閉め切った屋内 エアコンがない部屋
といった環境要因

屋外での長時間に及ぶ激しい運動・労働で
体温が過度に上がる
水分補給できない状況での労働
といった行動要因

高齢者 乳幼児 肥満である
下痢や二日酔いによる脱水状態
糖尿病 低栄養
といった身体要因

これらの要因が積重なり
体温調節機能の限界を越え
体温が下げられなくなると
熱中症を起こしてしまいます

<熱中症の指標:暑さ指数;WBGT>

テレビやインターネットの天気予報で
その日の熱中症の危険情報が示されていますが

危険度は
暑さ指数(WBGT)をもとに判断されます

人の体温に影響する要素は
気温 湿度 地面や建物からの輻射熱 風
などですが

そのなかでは
特に湿度の影響がいちばん大きく
(湿度が高いと汗が蒸発しないので
 体温が下げられないから)

暑さ指数を解説した図

暑さ指数は
それらを計算式により総合的に評価したものです

暑さ指数が増えると熱中症患者が増えることを示したグラフ

グラフに示されたように
暑さ指数が28℃を超えると
熱中症の患者さんは急増します

リアルタイムの暑さ指数環境省のサイト で知ることができます

<暑さ指数:WBGTによる日常生活・運動の注意点>

WBGTの値により
危険 厳重警戒 警戒 注意
の4段階に分かれ
日常生活や運動の注意点が異なります

暑さ指数による4段階の日常生活・運動の注意を説明する図

@危険(暑さ指数31℃以上:気温35℃以上)

すべての生活活動で熱中症がおこる危険性があり
高齢者では安静状態でも発生する危険性が大きいので

外出はなるべく避け
涼しい室内に移動し
運動は原則全て中止です (特に子供はダメ)

@厳重警戒(28~31℃:気温31~35℃)

すべての生活活動で熱中症がおこる危険性があり

外出時は炎天下を避け
室内では室温の上昇に注意する
激しい運動は中止する

@警戒(25~28℃:気温28~31℃)

中等度以上の生活活動でおこる危険性があり

運動や激しい作業をする際は
30分毎に充分に休息を取り入れ
水分補給する

@注意(25℃未満:気温28℃未満)

一般に危険性は少ないが
激しい運動や重労働時には
発生する危険性がある

運動はほぼ安全だが
適宜水分を補給する


<予防するには>

*通気性のよい吸湿性・速乾性のある衣服を着用し
*屋外では帽子をかぶり 日傘をつかい
*日陰を利用し涼しい場所で休み
*屋内では通気を良くして 適宜冷房を使用し 
*こまめに水分・塩分を補給する 

といったことが予防策になります


<重症度別の症状と対処>

@重症度Ⅰ度

めまい 立ちくらみがある 
気分が悪い ボーッとする
手足がしびれる
筋肉のこむらがえりがある 筋肉が痛い
といった症状が認められ

涼しいところに避難し
水分・塩分を補給するようします

自力で水分がとれなければ
医療機関を受診してください


@重症度Ⅱ度

頭が痛い・ガンガンする 
吐き気がする・実際に吐く
体がだるい
意識がなんとなくおかしい
といった症状が認められ

あおぐ 服をゆるめる 
体を積極的に冷やす
といった対処が必要です

濡らした体にタオルをあてると良いですが
顔だけではダメで
脇の下 首筋 足の付根など
太い血管のある部位を冷やすと効果的です

自力で水分がとれなければ
医療機関を受診してください


@重症度Ⅲ度

意識がない
体がけいれんする
真っ直ぐに歩けない
体が熱い
呼びかけに対する返事がおかしい
といった症状が認められるときは

すぐに救急車で病院に行きましょう

重症度別の症状と対処法を示した表

<応急処置のチェックポイント>

*Ckeck1:熱中症を疑う症状がありますか?

熱中症で見られる症状は
倦怠感 虚脱感 めまい 失神 頭痛 吐き気 嘔吐
筋肉痛 筋肉の硬直 大量の発汗 高体温
意識障害 けいれん 手足の運動障害 などです

こうした症状が見られるときは
熱中症を疑ってください

*Check2:意識がありますか?

意識があれば 
涼しい場所に避難して
服を緩めて体を冷やし 水分を補給する

意識がなければ すぐに救急車を呼ぶ

救急車がくるまでの対処のポイントは
涼しい場所に避難し
服を緩めて 首 脇の下 太腿の付根を冷やし
無理に水を飲ませないことです

*Check3:自力で水分を摂取できますか?

摂取できれば
スポーツドリンクなどで水分・塩分を補給する

自力で水分がとれなければ
医療機関を受診しましょう

*Check4:上記の処置で症状が改善しましたか?

良くなれば
安静にして休息をとり続ける

良くならなければ
医療機関を受診しましょう

応急処置のまとめ

<まとめ>

毎日の気象情報で
その日の熱中症の危険度を知り

危険度に従い
屋内外での行動に充分に気をつけ予防する

熱中症が疑われたら
意識があるか 
自分で水分を補給できるか 
をチェックして 

ダメそうなら医療機関を受診するか救急車を呼ぶ

以上のことがポイントです

熱中症は 屋外だけでなく室内でも起こります

また特にお年寄りや乳幼児は
素早く対応しないと命にかかわります

お年寄りのなかには
暑さをあまり感じない方もおられるようなので
ご本人に暑いかどうかを尋ねるだけでなく
室内の温度計をcheckして
冷房の調節することが大切だそうです


年齢別の熱中症発症率

当分の間は厳しい暑さが続きそうですので
熱中症には充分にご注意ください


高橋医院