トランス脂肪酸にご用心!
中央区・内科・高橋医院の 健康のための栄養学に関する情報 トランス脂肪酸 この名前を聞いたことがありますか? 今年の6月16日に アメリカの食品医薬品局(FDA)が 2年後の2018年6月から いかなる食品にも トランス脂肪酸が添加されること まかりならぬ というお達しを出したので ニュースなどで聞かれた方も おられるのではないでしょうか? 脂肪酸は 食事から吸収・代謝されて体内に存在する 脂質の代表選手ですが 色々な種類があり しかも善玉とか悪玉とか役割も複雑なので どれがどれだかこんがらがってしまいます 栄養学の教科書にも 「脂肪酸でつまずいて学習意欲がそがれる人が多い」 と書かれています(笑) そんな脂肪酸については 近々しっかり解説しますが 今日は旬のトランス脂肪酸についてご紹介します <トランス脂肪酸の構造> トランス脂肪酸は その分子構造に特徴があります 脂肪酸の基本構造は 炭素分子の直線的な結合ですが 一部の炭素間が二重結合している種類があり それを不飽和脂肪酸と呼びます 炭素は4本の腕を有しますが 4個の分子と結合していないから 不飽和と呼びます 下図をご覧になり 左の飽和と右の不飽和の差異をイメージしてください 二重結合した炭素には それぞれ水素分子が1個ずつ結合しますが そのふたつの水素分子が 同じ側についているものを シス脂肪酸 反対側についているものを トランス脂肪酸と称します これが今日の主役です <トランス脂肪酸を多く含む食品> 飽和脂肪酸は 魚に多く含まれる コレステロールを下げる良い脂肪酸 不飽和脂肪酸は 肉に多く含まれる コレステロールを上げる悪い脂肪酸 そうした漠然としたイメージを お持ちかもしれませんが トランス脂肪酸は 悪い脂肪酸のなかでも 札付きの悪! トランス脂肪酸の多くは 人工的に出来たものです *常温では液体の植物油や魚油を 固体にするために水素添加により加工するとき *植物油の臭いをとるために 高温処理したとき *油を高熱で調理したとき (揚げ物を作る際など) これらの過程で トランス脂肪酸は生成されます ですから トランス脂肪酸が多く含まれている食物は *水素添加で製造される マーガリン ファットブレッド ショートニング *それらを原材料にした ケーキ ドーナツ パンなど *高温で揚げられた フライドチキン フライドポテト パイなど *カップ麺 カレールウなどの インスタント レトルト食品 *から揚げ ピザ コロッケなどの冷凍食品 などが代表選手となります 美味しそうだけれど 何となく体に悪そう という感じで 肥満傾向にある人たちがいかにも好みそうな食品 でもありますね(笑) <トランス脂肪酸がワルモノ扱いされる理由> では なぜトランス脂肪酸が 悪者扱いされているかというと *血液中のLDLコレステロールが増えて HDLコレステロールが減る *動脈硬化を促進し 心筋梗塞や狭心症のリスクを増加させる *肥満を発症させやすく インスリン抵抗性になりやすい *アレルギー アトピー疾患を増加させる *胎児の体重減少 流産 死産を 生じさせる可能性がある *ガン 免疫機能 認知症などへの悪影響がある といったことが明らかにされていて 食品から摂る必要がないもので 摂りすぎた場合の悪影響が大きすぎる と見做されているのです 要するに トランス脂肪酸を食べると 心筋梗塞 狭心症 糖尿病 肥満になるからダメ! ということです <世界各国におけるトランス脂肪酸の規制> FDAは2006年から 食品の商品ラベルに トランス脂肪酸含有量を明記するように指導し 2013年から 段階的に使用を禁止する方針を打ち出してきましたが 未だにトランス脂肪酸摂取レベルが 憂慮されるものと判断し 今回の全面禁止措置に踏み切ったわけです では 一体どれくらいの量のトランス脂肪酸が 体に悪いのでしょう? 世界保健機関(WHO)は トランス脂肪酸の摂取量は 全エネルギー摂取量の1%未満にすべし と勧告しています 現実的には アメリカのトランス脂肪酸摂取量は2% イギリスは1%です <日本におけるトランス脂肪酸の規制> 日本はどうかというと 日本のトランス脂肪酸摂取量は0.3~0.47% WHOの勧告値を充分にクリアしています ということで厚労省は 「危惧すべきレベルではないため 現時点では規制を導入する予定はない」 としています 日本人が日本で普通に食事をしていれば トランス脂肪酸の悪影響は 心配ありませんということです でも 普通の食事をしていない日本人が 最近は増えていますよね! ファストフードの揚げ物 インスタント食品 ホカ弁 お菓子 そうしたものばかり食べている人 都市部で生活する30~50歳の女性は 菓子パン ケーキ クッキー アイスクリームなどを好んで食べているので これらを過剰に食べている人は トランス脂肪酸摂取量が高い危険性がある との報告もあります 市販の揚げ物は 植物油を何回も使いまわししているので トランス脂肪酸が含まれている可能性が高い ショートニングは サクサク パリパリした軽い食感を出すのが得意なので こうした食感の菓子類やパン類には トランス脂肪酸が多く含まれている といった勧告もあります このような食習慣の方は 意外に少なくないと思います そうした方々 「トランス脂肪酸にご用心」ですよ!!
高橋医院