肥満で脂肪細胞が大きくなると、、
脂肪組織が分泌するアディポカインは 糖尿病や動脈硬化の病態形成に 深く関わっています この事実が判明して以来 糖尿病や動脈硬化の病態の考え方が 大きく変わったといっても過言ではありません さて 世の中では色々なものを 善玉と悪玉に別けます たとえば コレステロールは *悪玉コレステロール(LDL) 血管壁にコレステロールを運んで蓄積させて 動脈硬化を促進する *善玉コレステロール(HDL) 血管壁からコレステロールを取り去り 動脈硬化を防ぐ に別けられます 今が旬の腸内細菌も *善玉菌 健康に良い影響を及ぼすビフィズス菌など *悪玉菌 有害物質を産生するウエルシュ菌など に別けられます アディポカインも 善玉と悪玉に別けられます <善玉アデイポカインと悪玉アデイポカイン> 動脈硬化を促進させて 糖尿病の原因であるインスリン抵抗性を促進するのが 悪玉アディポカイン (代表例は TNF-α PAI-1など) 逆に 動脈硬化を予防して インスリン抵抗性を改善するのは 善玉アディポカイン (代表例は アデイポネクチン レプチンなど) アディポネクチンは 運動模倣薬の話題のときにでてきました 脂肪細胞は 善玉アディポカインも悪玉アディポカインも 両方とも産生しますが その産生バランスが 状況によって異なってくるのがポイントです 善玉を悪玉よりたくさん分泌すれば 糖尿病や動脈硬化にはなりませんし 善玉より悪玉の分泌が多ければ 糖尿病や動脈硬化になってしまいます では 善玉と悪玉の産生バランスは どのような状況で変化するのでしょう? <悪玉アデイポカインの産生は 肥満で増える> 肥満 特に内臓脂肪が蓄積してくると 脂肪細胞が肥大化し それにともない 各種アディポカイン遺伝子の発現パターンが異なってきて *善玉アディポカインの分泌が減り *悪玉アディポカインの分泌が増えてしまう のです <肥満による脂肪組織内の慢性炎症の誘導> 肥満により 脂肪組織内に 炎症を促進するタイプの免疫細胞の浸潤が見られ それにより慢性的な炎症が生じてきます 肥満のない状態の脂肪組織内には 炎症反応を抑制するタイプの免疫細胞 (M2マクロファージ Treg iNKTなど)が 多く存在していますが 肥満になると 抑制性の免疫細胞が減り 炎症を促進するタイプの免疫細胞 (M1マクロファージ CD8・T細胞など)が 外部から脂肪組織内に浸潤してきます こうした現象は 肥満にともない変化した脂肪細胞が 炎症を起こす免疫細胞を引き寄せるアディポカインを 産生するため と考えられます 一方 アディポカイン以外にも 脂肪細胞から放出される遊離脂肪酸(FFA)や 肥満を促す高血糖状態が マクロファージなどの炎症性免疫細胞を活性化する機序も 考えられています このように 脂肪酸などの代謝産物が マクロファージなどの免疫細胞を活性化する というアイデアは 従来はほとんど考えられていなかったことで 肥満を誘導する代謝動態と 慢性炎症のリンクを説明する機序として 非常に興味深いものがあります いずれにせよ 肥満により誘導された脂肪組織内の慢性炎症は 脂肪細胞そのものの機能に影響を及ぼし 最終的にインスリン抵抗性が促進されると推測されていますが 今日の話題の本筋である 肥満にともなって 脂肪細胞のアディポカイン産生パターンが 善玉から悪玉に変化する現象に 脂肪組織内の慢性炎症がどのように絡んでいるかは とても興味深い点です ということで 肥満になると *脂肪組織内に慢性炎症が起こり *脂肪細胞のアディポカイン産生パターンが 善玉から悪玉に変化する そのため 糖尿病や動脈硬化が促進してしまう という流れを ご理解いただけたかと思います 毎度のことで恐縮ですが 諸悪の根源は 食べ過ぎ・運動不足による肥満 ということで ダイエット中の皆さん 頑張りましょう! 次回は 具体的にどのような種類のアディポカインが 糖尿病や動脈硬化に関与しているか説明します
高橋医院