アディポカイン
肥満になると糖尿病や生活習慣病が発症する原因として 最も注目されているのが 脂肪組織から産生されるアディポカインです <アデイポカインとは?> アディポカインは 脂肪組織が分泌するホルモン様の物質で 全身の多くの臓器に働きかかけて さまざまな作用を発揮します 以前 筋肉が産生するマイオカインについて説明したときも 言及しましたが 内分泌器官以外の臓器がホルモンを産生するなんて 昔は全く考えられていませんでした 脂肪組織は 単に脂肪がたまったぶよぶよした役に立たない塊 と思われていましたが 1990年代に 皮下脂肪や内臓脂肪の網羅的遺伝子解析が行われ 脂肪組織にはタンパク質を分泌する遺伝子が 数多く含まれていることがわかり にわかに注目を集めるようになり やがて 脂肪組織が分泌しているホルモン様物質が同定されて アディポカインと呼ばれるようになりました 筋肉が産生するマイオカインや 肝臓が産生するヘパトカインが同定されたのは 2000年代に入ってからですから 非内分泌臓器が産生するホルモンの 先駆けのような存在といえます ですから アディポカインが発見された当時の驚きは マイオカインやヘパトカインのときとは 比較にならないほど大きかった まさか 脂肪の塊がホルモンを産生しているなんて! その後 次々と 新しいアディポカインが同定されて 現在ではその数は600種類にも及んでいます <アディポカインが有する多彩な作用> しかも 同定されたアディポカインの機能を調べていくうちに アディポカインは 非常に多岐にわたる作用を有していることが 判明しました アディポカインが作用する臓器ですが 脳 肝臓 膵臓のβ細胞 骨格筋 心臓 血管内皮細胞 免疫細胞 など 全身の多くの臓器に作用して さまざまな影響を及ぼします 具体的には *食欲のコントロール *インスリン感受性 インスリンの分泌 *糖代謝 脂質代謝 *血管内皮細胞の増殖と機能 *動脈硬化 *血圧のコントロール *免疫反応 *炎症反応 といった 実に多種多様な生体反応に関与します もちろん 1種類のアディポカインが これら全ての作用を発揮するわけではなく さまざまなアディポカインが それぞれ特有な機能をいくつか発揮しています ということで 多くの種類のアディポカインが さまざまな働きをしているのですが あまりに多種多様で いったい何がどうなっているのやら という感じも 正直言ってあります 脂肪組織が侮れないことは わかりましたが 同じ臓器に働いたり 同じ作用を発揮するアディポカインが それぞれ複数あったりするので 複雑で 解析が難しい そんな中で 現在 特に注目されているのが アディポカインと肥満 糖尿病 動脈硬化との関連です 次回は その点について詳しく説明します
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