NAFLDとメタボを結ぶもの
NAFLD・NASHの解説の最後に ヘパトカインの話題を提供します 以前に 内分泌臓器以外の臓器でも ホルモン様の液性因子を産生しているお話をしました 脂肪細胞が分泌する アディポカイン 筋肉細胞が分泌する マイオカイン いずれも 糖質や脂質の代謝に影響を及ぼしていますが 肝臓も そうした作用を有するホルモンのような液性因子を 何種類も産生していることが明らかにされました それらは ヘパトカイン と呼ばれています 既にご説明したように 肝臓は病気がない生理的な状態では 糖質や脂質の代謝の中心的な役割をはたしていて 脂肪細胞や筋肉細胞と協調して 代謝調整に寄与しています ですから 肝臓が何らかの因子を産生して 筋肉や脂肪のインスリン感受性に影響を及ぼすなどして 代謝を制御しているというアイデアは 昔からありました また 今回説明してきたNAFLDやNASHのように 肝臓自体に代謝的な病気が生じると 病的な肝臓では 産生する代謝調節性液性因子も変化して そのためNAFLDは 糖尿病をはじめとする他の生活習慣病と 関連するのではないか? こうしたコンセプトは 当然 有り得そうです 生理的な状態で 代謝を調節しているヘパトカインが 肝臓の病気では その産生パターンや産生量が変化してしまい 他の生活習慣病の病態に影響を及ぼす という考え方です 肥満によって 脂肪細胞が分泌するアディポカインの質が 善玉から悪玉に変化するようなイメージです ヘパトカインが NAFLDと糖尿病などの病態を結び付ける縁になる というアイデア そして 脂肪細胞や筋肉細胞のときと同じように 肝臓の遺伝子発現の網羅的解析が行われ 多くの細胞外分泌タンパクの遺伝子を有していることが 判明しました 肝臓は さまざまなヘパトカインを産生しているのです 現在 特に糖質や脂質の代謝との関連 NAFLDと糖尿病などの生活習慣病との関連の視点から いくつかのヘパトカインが同定され 詳細な研究がなされています アディポカインの説明をしたとき 善玉と悪玉に分けて解説しましたが ヘパトカインも *NAFLDや糖尿病の病態を進行させる悪玉 *改善させる善玉 にわけることができます 次回は 善玉ヘパトカインについて解説します
高橋医院