善玉アディポカイン
脂肪細胞から産生される アディポカインが 肥満 糖尿病 動脈硬化などの病態に 関わることを説明してきましたが どのようなアディポカインが どのような働きをして関与しているのか? 600種類以上もあると 報告されているアディポカインのうち 代表的なスター選手について説明します まずは 善玉アディポカインから <レプチン> レプチンは アディポカイン研究の黎明期に発見されたもので 1994年に発見・同定されてから 既に20年以上が経過しています 体脂肪を減らして肥満を抑制する働きがある 善玉アディポカインです @肥満ではレプチン抵抗性になる 多くの肥満患者さんでは 血中レプチン濃度が高いにもかかわらず レプチンに対する反応性を失っているために 機能が発揮できていないことが 明らかにされました 糖尿病でのインスリン抵抗性のように レプチン抵抗性という状態が 肥満の病態に関わっているのです インスリンにしてもレプチンにしても モノは分泌されているのに 反応性がなくなるという現象が 病態に関与するのは とても興味深いことです どうして そんな現象が起こるのかな? ヒトの体は ホントに不思議です、、、 @食欲の制御作用 さて レプチンの働きで特徴的なのは 食欲の制御です 消化管や血液などでの栄養情報を 脳の視床下部にある食欲制御中枢に伝え その結果 食欲が抑制されます しかし 肥満患者さんでは 前述したレプチン抵抗性があるため 食欲抑制作用も発揮されていません 現在 レプチンを抗肥満薬として 用いることができるようにするために レプチン抵抗性を解除する さまざまな試みがなされています <アディポネクチン> アディポネクチンは レプチンに次いで 1995年に同定された 脂肪細胞から最も多量に分泌される アディポカインです 肥満がない状態で多く存在する 小型脂肪細胞から分泌されます @さまざまな体に良い作用を発揮する *インスリン感受性を高めて 糖の代謝を促進する以外にも *抗肥満 *抗炎症作用 * 抗アポトーシス作用 なども有しています *血管拡張作用を持ち 血圧上昇を抑制します このように アディポネクチンは 体に良い作用を有する 代表的な善玉アディポカインです @肥満になると分泌量が低下してくる しかし 内臓脂肪が蓄積して 脂肪細胞が肥大化してくると その分泌量が低下してきて その結果として 糖尿病や高血圧が誘導されてしまいます 実際に 肥満 糖尿病などの患者さんでは 血中アディポネクチン値が低く 心筋梗塞などのリスクを反映する バイオマーカーとしての意義が認められています また 血中アディポネクチン値が高い人は寿命が長い という報告もあります こうしたことから 以前ご紹介したように アディポネクチンそのものや アディポネクチン受容体の刺激物質が 肥満 糖尿病 動脈硬化の治療薬として期待され 開発がすすんでいます <BMP-7・BMP-4> BMP-7とBMP-4は 善玉アディポカインの新たなスター候補です 脂肪細胞には 白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞があり 褐色脂肪細胞の方が エネルギーを消費してくれるので 白色脂肪細胞を褐色脂肪細胞に分化させることで 肥満を改善させようという治療の 開発が試みられていますが BMP-7 BMP-4は いずれも褐色脂肪細胞の分化誘導作用があるので 大きな注目を集めています さらに BMP-7には レプチン非依存性の食欲抑制効果や エネルギー消費促進効果もあるので 抗肥満薬としてBMP-7が利用できないか さまざまな研究が現在進行形で行われています <FGF-21> マイオカインの解説でも登場したFGF-21ですが BMP-7と同様に 白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞への分化促進作用があり インスリン抵抗性の改善作用も認められ やはり 善玉アディポカインの新たなスター候補といえます なんといっても *アディポネクチンの分泌促進作用 *レプチン感受性の増強作用 が最大の魅力で 肥満や糖尿病治療への FGF-21アナログの臨床応用が 既に試みられています このように レプチン アディポネクチンという 代表的な善玉アディポカインに加え BMP-7 BMP-4 FGF21 などの 褐色脂肪細胞の分化促進 レプチン アディポネクチンのヘルプ といった新たな作用を有する 善玉アディポカインが見出され これらを用いた治療が 積極的に試みられつあります
高橋医院