アメリカの憂鬱
NHKの番組 欲望の民主主義 の続きです 番組では 民主主義が生まれたフランスおける 現状分析に続き もう一方の民主主義国家の雄である アメリカの分析に入ります アメリカは フランス革命に先駆けて 独立戦争により合衆国となり 自由と平等を礎とし 民主主義の壮大な実験を行った国です と同時に まさに世界を混迷させる根源とも見做されている グローバル資本主義 金融資本主義を 推進している国でもあります そんなアメリカにおける 民主主義の状況はどうなのか? どうって あのトランプを 大統領に選んだわけですよね(笑) 政治学者のヤシャ・モンクは 民主主義は倦怠期にあり 多くの人々が かつてのように民主主義に期待していない一方で 独裁的な民主主義を 以前より容認するようになっている と指摘します そして 今のアメリカは 民主主義を大切にし そのルールを守らない大統領を選んでしまった まさに危機的な状況にある と危惧します なぜ そんなトランプを選んでしまったのか? 経済学者のダニエル・コーエンは ポピュリズムの台頭は 自分の居場所のない庶民の抗議表明で 社会に置き去りにされた人々のうめきである とし 社会心理学者のジョナサン・ハイトは 民主主義には 全てを焼き尽くしてしまいたい 破壊したいという破壊衝動があり それこそが トランプを支持した人の気持ちで アメリカのポピュリズムの原点である と 分析・指摘します えっ ここでまた 破壊衝動が出てくるの? 前回シリーズの 欲望の資本主義 でも 破壊衝動が ヒトの欲望 羨望の根底にあると 話題になりましたが 破壊衝動は 民主主義の根底にもうごめいているの? 根深いですなあ(笑) では 民主主義とは何なのか? 番組では折に触れ この根源的な問いを発します そして この段階では 民衆が主権者で 民衆による支配で動く 理念 政治制度である と定義します 民主主義とは 何なのか? 政治学のリチャード・J・サミュエルズは これまでの全ての政治制度を除けば 民主主義は 最悪の政治制度である という チャーチルの言葉を 揶揄的に引用しながら 民主主義を *礼節ある対話 受け入れられた規範のもとで行われる 政治的競争 *特定のグループに 権力が集中しないようにするためのプロセス *民衆がリーダーを選び リーダーに公共政策に対する責任を問える仕組み と定義し この制度がきちんと行われるためには *法による支配と権利の保障 *言論 信仰 報道の自由 少数意見の尊重 が 絶対に必要である こうした状況が整い 大衆の信頼があれば 民主主義はうまく機能していると言える と説きます 民主主義は 権力を持たない人に 権力を与えること つまり 富める人も貧しい人も 同じ1票の投票が出来る平等である そんな解説もします また ドイツの若き哲学者 マルクス・ガブリエルは 民主主義は 共同体の倫理の実践であり 声なき声を尊重する制度 少数派の気持ちを尊重することである とコメントします 一方 ジョナサン・ハイトは 少し意地悪なコメントもします そもそもアメリカ建国時のリーダーたちは 民主主義は 民衆や大衆により決められるので 独裁政治になると考え 民主主義を好んでいなかった 論理的思考は 感情や激情によって 左右されてしまう 人が怒っているときは 正しい判断ができず 煽情的な政治家に魅かれてしまう だから 民主主義には危うい側面がある それこそがまさに 今のアメリカやヨーロッパの ポピュリズム台頭の根幹ではないか? アメリカの現状分析を通して 民主主義とは何か? どんな問題点を内包しているのか? おぼろげながら 見えてきた感じがします さらに番組は 悩めるアメリカの現状について 掘り下げていきます
高橋医院