今から、30年前ぐらいでしょうか。

50代の独身男性が、髄膜炎で錯乱状態で運ばれてきました。

色々検査をすると・・HIV陽性で、日和見感染のクリプトコッカス脳症でした。

まだHIV、つまりAIDSの発症抑制の治療がなかった頃のお話です。

今は、HIV陽性なら、色々良い薬があり、AIDSの発症を抑制することができるようになってきています。

彼の治療をしましたが、なかなか完全には戻らず、最終的には、脳に障害が残ってしまい、

言葉が少し不自由となりました。

彼は、誰でも知っているような大きな会社に勤務しておられました。

ご両親が80代で、ご健在。3人暮らしのようで、いずれにせよ、病状説明をしなければいけません。

はじめましては、ICUでした。

ご両親に、HIVであることを告げると、みるみるお二人とも、顔が白くなり

“真面目な息子が・・”とみるみる母は涙目に。

父は、拳を握り・・その後、母しか病院にはお見舞いに来なかった・・

今後、80代で先短い我々が、どのようにまだ50代の息子を支えていくのか・・

自分たちが、死んだら息子はどうなるのか・・大変悩まれていて、こちらも心が潰れる思いでした。

今でいう、ある種の8050問題、この言葉を初めて聞いた時、

うまいネーミングと思うと同時に、このことを思いだしたのでした。

  クリプトコッカスは鳩に多いです。

高橋医院