原発性硬化性胆管炎・PSCとは?
胆石 胆管炎の解説をしたので これを機会に 胆管に生じる病気について説明します 胆石と異なり 初めて名前を聞く病気も多いと思いますが このあたりを得意としている肝臓専門医としては どうしても紹介したくなってしまいますので お付き合いください(笑) トップバッターは 原発性硬化性胆管炎・PSCです この病気は 国が定める指定難病のひとつで 診療に際して公費の助成が受けられます <原発性硬化性胆管炎・PSCとは?> なんらかの原因により 胆管が障害されて 線維性狭窄により胆管が狭くなり 胆汁の流れが滞り 肝臓の働きが悪くなる 進行性の慢性炎症疾患です 肝臓の中・外の 比較的太い胆管が障害されて 多発性・びまん性の狭窄が生じるのが この病気の特徴です しばしば 潰瘍性大腸炎 クローン病などの 炎症性腸疾患が合併します ことに若い患者さんに多く 日本のPSCの患者さんのおよそ40% 若い患者さんでは60%に 炎症性腸疾患が合併すると報告されています なかでも 潰瘍性大腸炎の合併が多い <疫学> 2018年の年間新規患者数は およそ2,300人で この10年間でおよそ2倍に増加していました 世界的にみてもPSCの患者さんは増加しています 欧米での人口10万人当たりの有病率は 日本の約3~9倍あります 男性にやや多く 男女比は約1:0.9 発症年齢は 20歳代と60歳代に2つのピークがみられます 肝内 肝外胆管の両方の罹患例が多く 潰瘍性大腸炎の合併を34%に 胆管がんの合併を7.3%に認めています <原因> 炎症を起こした大腸の粘膜を通して 腸内細菌が肝臓へ流入してくるのではないか 大腸でリンパ球が異常に活性化され 肝臓に流入して胆管を傷害するのではないか などの仮説も提唱されていますが まだ解明には至っていません およそ30%の患者さんで 抗核抗体が検出されることなどから 自己免疫の関与も示唆されています またPSC患者さんの血縁者では PSCの発症率が一般人口の数十倍に達することから 環境因子とともに遺伝的要因が その発症に関与していると考えられています <病型> 傷害される胆管の存在部位により *肝内型(病変が肝内胆管に限局するもの) *肝外型(病変が肝外胆管に限局するもの) *肝内外型(病変が肝内および肝外胆管に及ぶもの) に分類されます <症状> 胆汁うっ滞が原因の 黄疸 皮膚のかゆみで発症することが多く 黄疸が28%に 掻痒感が16%に認められています 胆管に細菌が感染して起こる胆管炎による 発熱などをともなうこともあります 一方 無症状のまま 人間ドックや健診で 肝機能検査や腹部エコー検査の異常を指摘され それをきっかけとして診断される場合もあります <検査> @血液検査 ALPやγGTPが増加します ALP値が6か月以上にわたり 正常上限の2~3倍に上昇します 診断時にALP値が 基準値上限の2倍以上であった症例は 全体の半分程度にとどまり ALPの上昇が比較的軽度で診断されている症例もみられます 抗核抗体 p-ANCAなど自己抗体の陽性率は あまり高くありません @エコー検査 散在する胆管内腔の狭窄と拡張と 胆管壁肥厚を認めます @MRCP ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影法)など胆道造影 *狭窄像 (輪状狭窄 膜状狭窄 帯状狭窄及び二次的変化として憩室様突出や数珠状を呈する) *胆管壁不整像(毛羽立ち 刷子縁様) *肝内胆管分枝像の減少 *肝外胆管の狭窄に対して必ずしも肝内胆管が拡張しない といった 肝内胆管の狭窄と拡張の散在性の混在が見られます 診断上最も重要なのは 胆道造影所見で *数珠状所見 *剪定状所見 *帯状狭窄 などがPSCに特徴的な所見です
高橋医院