時計遺伝子が作るヒトの慨日リズムは
24.5時間です

しかし 地球の自転で生じる1日のリズムは
24時間ですから

放っておくと毎日0.5時間のズレが生じ
最初は地球の朝とヒトの体の朝は同じでも
やがて地球の朝はヒトの昼という具合に
時差ボケに似たような状態が生まれてきてしまいます

と 以前から言われていましたが

最新の研究では
24時間10分が定説になっているようです

しかも興味深いことに
概日リズムが何時間かは 
人によって個人差があります

遺伝的に規定されていて
24時間10分より長い人もいれば短い人もいる

概日リズムの長さの頻度を示す棒グラフ


ただ上の棒グラフに示されているように
24時間より長い人が75%と圧倒的に多く
放っておくとズレが生じて夜型になりやすい

それでなくても前回ご紹介したように
現代の社会環境は
ヒトをして夜型生活を遅らせやすい環境なわけですから

そうした事態を避けるために
ヒトの体は毎朝 慨日リズムをリセットします


リセットを行う部位は
脳の視床下部の視交叉上核で
中枢時計と呼ばれます

朝起きて光を浴びると
光を感じた目の網膜から中枢時計に情報が伝わり
リセットされます

光による中枢時計のリセット

そして中枢時計から全身の細胞に
「朝だよ」情報が伝達されるのですが

興味深いのは 
全身の細胞1個1個が
独自の時計遺伝子を有していることです(末梢時計)

全身の細胞に分布している末梢時計

そんなこと イメージされたことはありますか?

肝臓や胃の細胞が別々に独自の時計を持ち
それに従って活動している

しかもさらに興味深いことに
臓器別に細胞の慨日リズムの長さが
微妙に異なるようです

肝臓の細胞があくびしているとき
胃の細胞は既にしっかり働いているとか(笑)


脳にある親時計と末梢の細胞にある子時計

そんなマンガのような世界にならないために

末梢の個々の臓器の細胞も
朝に慨日リズムをリセットして 

全身の全ての細胞が同期して
同じリズムで働くように調整します

このリセットは
中枢時計からの情報伝達にもよりますが

朝食の摂取により
末梢時計のより完全な位相の補正がなされます

つまり

中枢時計朝の光によりリセットされ

末梢時計朝食の栄養素によりリセットされる

というわけです

中枢時計 末梢時計のリセットのされ方の違い

このような2重のリセットシステムにより 

毎朝体全体の概日リズムが調整され
ホルモン分泌 栄養素代謝 自律神経などの生体機能が
滞りなく行われるのです


二重のリセットシステムによる生体機能の日内変動の管理

一方
朝のリセットによる中枢時計と末梢時計の同期が
きちんと行われないと

細胞がうまく働かないので
さまざまな生体機能に支障が出てきてしまうこと
が明らかにされています


リセットの異常で起こってくる生体機能の支障

ということは
体をきちんと働かせるためには朝食が大事!
ということです

次回は朝食をきちんととらないとどうなるか
不規則な時間に食事をしているとどうなってしまうか
についての詳細をご紹介します


いやー それにしても
細胞ひとつひとつがマイ時計を持って活動しているなんて
想像したことすらありませんでした

もちろん医学生時代に習ったこともありません
全く知らない世界でしたから
ネタ本を読んでいてとても面白かったです

びっくりしました~(笑)


 

高橋医院