アルコールと膵臓
アルコールと肝臓の話をしてきましたが 肝臓よりも アルコールにより 大きな被害を受ける臓器があります 膵臓 です 下図で 肝臓の下 胃の前 十二指腸のすぐ右隣に位置する 黄色く描かれた横長の臓器が 膵臓です というのも 肝臓の細胞はアルコールにより 傷害を受けても再生できますが 膵臓の細胞は再生できません また 肝障害を生じるより少量のアルコールで 膵臓は傷害されます ですから大酒家は 肝臓だけでなく 膵臓の心配もしないといけません 膵臓については 稿を改めて詳しく紹介しますが 主な膵臓の病気は 急性膵炎 慢性膵炎 膵臓がんで アルコールは 急性膵炎 慢性膵炎 に深く関わっています 急性 慢性膵炎ともに 多い原因としては アルコール 胆石 自己免疫などがありますが アルコールが原因となるのは 急性膵炎の33%(男性45% 女性12%) 慢性膵炎の63%(男性73% 女性27%) に及びます 女性の比率は男性より少ないですが アルコール性肝障害と同様 このところ急増しています アルコール性膵障害は 年代的には30~50歳代に多く 喫煙者が多いことも特徴的です 1日にアルコール80g以上を 長期間飲んでいる人に多く 大量飲酒を始めてから10~15年経つと 慢性膵炎になるリスクが高くなる 1日80gがどれくらいの量のお酒かは 復習されてください 急性膵炎になると みぞおちから左上腹部 背中が痛くなり ときに 前かがみにならないといられないほどの 激烈な痛み に襲われます 大量にお酒を飲んだり 脂の多い食事をしたあとに 痛みに襲われることが多い そうした激烈な痛みはなく 食欲不振 腹部膨満感 軟便 下痢 軽度の発熱 といった症状だけのこともあります アルコール性の急性膵炎になり 治療後に改心して断酒できればよいけれど 約30%の方が断酒できずに 再び飲み始めてしまい 発作を繰り返していくと やがて膵臓細胞が破壊され線維に置き換えられ 慢性膵炎に移行します 急性膵炎後に断酒できないと 膵炎の再発率 慢性膵炎への移行率 糖尿病合併率 が有意に高くなり 生命予後も明らかに悪くなる 膵臓はインスリンを産生するので 壊されるとインスリンが分泌できなくなり 二次性の糖尿病にもなってしまいます そして最初に述べたように 膵臓の細胞は再生できませんから 膵臓の機能が破綻してしまうと 非代償期になり 今度は腹痛でなく 消化吸収障害 栄養不良 体重減少 頻繁な下痢 などに悩まされ 膵臓がんの発症リスクも高まってきます また そうなってしまう方は アルコール依存症の方が多いのも事実です ですから アルコール性膵炎の治療のいちばんのポイントは なんといっても 断酒! アルコール性膵炎における断酒の重要性は アルコール性肝障害のそれを大きく上回ります 長期にわたりたくさん飲まれている方 肝機能が正常でも安心できませんよ! 是非 膵臓のケアも怠らないよう お気をつけください!
高橋医院