薬物性肝障害を疑う症状と早期発見のための対策
薬物性肝障害で見られる症状は @全身症状 倦怠感 発熱 黄疸 @消化器症状 食欲不振 吐き気 おう吐 腹痛 @皮膚症状 発疹 じんましん かゆみ などで これらの症状が 急に出現したり 持続したりすることがあります 発疹は 比較的高頻度に見られますが その形態はさまざまで 薬物性肝障害に特徴的なものはありません <各タイプの薬物性肝障害で見られる症状> @アレルギー性特異体質 *発熱(38~39℃)を認め *発疹・皮疹等が早期に現れ 次第に強くなる *全身倦怠感 嘔気・嘔吐等の消化器症状がみられる ことが特徴的で 肝内での胆汁うっ滞を起こしやすいため 黄疸や皮膚掻痒感を認めることがあります @中毒性 代謝性特異体質性 それぞれに特徴的な症状はありません また 何も症状がないこともあるので 服用開始後は 定期的に肝機能検査を行うことが勧められます 特に新しく薬物を服用し始めたときは 注意が必要です <薬物を服用してから発症するまでの期間> @アレルギー性特異体質 中毒性や代謝性特異体質性に比べて 比較的早いですが 服用開始後に 活性代謝物と肝細胞成分との複合体に対するアレルギーを獲得し その結果として肝障害が生ずるので 服用後2~6 週で起こることが多い たまたま以前に同じ薬を服用していて 既にアレルギーを獲得している場合は 1 回のみの投与で すぐに症状が出る可能性もあります @中毒性 代謝性特異体質性 アレルギー性特異体質より長く 特に代謝性特異体質性では 数週から数か月と不定で長い傾向があり 90 日以降に発症がみられる場合も約20%あります いずれにせよ 新しい薬物を服用し始めてから 上記のような症状を認めた場合は 薬物性肝障害の可能性を考えて すぐに受診することをお勧めします <薬物性肝障害の早期の対応策> その薬物を飲まないことが大切ですが 血圧の薬などは勝手に中止すると危険ですので 自己判断で服用を止める前に まずは早目に医師に相談してください その際には *服用している薬の種類 *服用開始から どのくらいの期間がたっているか *具体的な症状 程度 などについてまとめておかれると 診察がスムーズに運びます <肝細胞障害型と胆汁うっ滞型> 肝臓のどの部位が障害されるかで 臨床症状が異なります 肝臓には *栄養素の分解・合成・貯蔵や 薬物や毒素の解毒といった さまざまな機能をはたす 肝細胞 *肝臓から腸管へ胆汁を流す胆管という管を形成する 胆管細胞 の2種類の細胞が存在していますが 薬物性肝障害では *肝細胞が障害されると 肝細胞障害型 *胆管細胞が障害されると 胆汁うっ滞型 の2種類のタイプの障害が生じます @肝細胞障害型 AST ALTなどの肝機能検査値が上昇し その程度がひどい場合は 倦怠感などの症状を認めますが 軽度の場合は無症状であることが少なくありません ですから 肝障害に気づかず起因薬物の服用を継続した場合は 肝障害が進行して 肝不全に陥ってしまうこともあります そうしたことを防ぐためにも 繰り返しになりますが 新しく薬剤を服用し始めた場合は 自覚症状がなくても 定期的に血液検査を行うべきです @胆汁うっ滞型 血液検査では ALP γGTPなどの検査値が上昇しますが 病態が進行してくると 黄疸が認められるようになります だるさなどに加えて 白目が黄色い 尿の色が1日中紅茶のように濃い といった症状があったら すぐにでも受診してください 薬物性肝障害は 疑うことが大切で 早期発見して 早目に原因薬物の服用を中止すれば 予後は良好です 逆に 発見が遅れて 肝障害や胆汁うっ滞がかなり進んでから見つかると 厳しい予後をとることになるリスクもあります 何度もしつこくて申し訳ありませんが 新しく薬剤を服用し始めた場合は たとえ自覚症状がなくても 定期的に血液検査を行うことをお勧めしますし 今日ご説明したような症状が見られたら すぐに受診するようにしてください
高橋医院