果糖中毒1:肥満は自己責任ではない
「果糖中毒」は ロバート・H・ラスティグという UCLAの小児内分泌を専門とする先生が 2012年に書かれ 2018年に翻訳されて 一時期本屋さんの目立つ場所に 山積みされていました 最近の肥満やダイエットに関する トレンドの途端を作った そんな位置づけの本だと思います 原題は Fat chance: Bearing the odds against sugar, processed food, obesity, and disease 特に果糖にだけ注目した タイトルではありませんが 訳本のタイトルは「果糖中毒」 四文字熟語(?)で キャッチーなタイトルですね(笑) さて 内容をダイジェストしましょう <人類は突然太りだした> @たった30年で世界中に肥満が蔓延し始めた まず 肥満の現状を紹介します 肥満人口は2倍になり 子供の世代にも肥満は広がっている 発展途上国でも肥満は増えていて 感染性より大きな脅威であり 世界の死亡原因の40%が 肥満を原因とした糖尿病である @遺伝と食環境のミスマッチが肥満の原因 ミスマッチ説については このブログでも紹介しましたが 現代に人が新たに築き上げた食環境と 先祖から引き継いだ 遺伝・体質が制御する 栄養代謝メカニズムとの ミスマッチこそが 肥満の原因だと指摘します ご先祖様から 飢餓に備えて脂肪を貯めようとする体質を 引継いでいるのに 栄養過多な飽食な食環境で生活していては 太るのが当たり前で 簡単な解決法などなく 痩せることが難しい時代になっている @太らせる食環境 どんな食環境が人を太らせるか? *加糖飲料の消費の増加 *生の果実 野菜 食物繊維を 摂らなくなった *家族での食事機会の減少 *ファストフードの盛隆 *体を動かすことが減り 座位の時間が増えた といったことが挙げられています <肥満は自己責任ではない> ここで 「肥満は自己責任ではない」 という論が展開されます 現代社会では 太っていたり ダイエットに失敗してリバウンドするのは その人が意地汚く食べて 怠惰で動かないからだ と見做され ともすれば揶揄され 自己責任が追求される傾向がありますが それは正しくないと解説します その理由は あとで詳しく述べられますが 筆者は 「肥満の大流行を起こした7罪」 を列記します *肥満は自己責任 という価値観 後述する肥満を作りだした張本人が 自分たちの責任回避のために創り出した 誤った価値観である *健康保険業界 肥満の治療費を払いたくないために 「肥満は自分で選んだ生き方の問題なので 支払い義務はない」 というロジックを展開している *医学界 「生活習慣が肥満をもたらし 肥満がメタボを引き起こす」 という認識はあるが 「原因は患者自身にあり 肥満になるように行動した結果」 と多くの医師は考えている *肥満ビジネス 人助けをしているふりをして 肥満に付け入って大儲けしている 減量プログラム ジム ダイエット・サプリなどに関わる人たちで 年間1170億ドルの収益をあげている *肥満専門の人権活動家 太った人の人権擁護に熱心なあまり 肥満の学術研究も阻害している *食品業界 バランスのとれた食生活を おくれなくなったのは 食品業界の責任である 食品は商品の時代で 低価格と入手しやすさが最優先されるため 消費者に栄養学的に問題のある食品を どんどん食べさせ 肥満の増加を招いている しかし 自分たちの責任を認めたくないので 「自分の口に入れたものは 食べた人に責任がある」 というロジックで責任回避している *アメリカ政府 安い食品は政治を安定させるので 食物の価格を安くさせることが最優先され 白い炭水化物 糖分の多いジュースなどの 不健康な食物を公共的に提供している そして 食品業界と同様に 「アメリカ人は 食べ過ぎで運動量が少ないと主張 太っているのは自己責任」 というスタンスで 肥満の大流行への政府の責任は回避している こうして 肥満になるのは 単に個人の暴食と怠惰によるのではなく 社会的な問題が大きく影響していることを 強調しています 最後の方の 食品業界や政府に対する批判は 痛烈で小気味よいですね(笑)
高橋医院