世界のアート事情から 置き去りにされる日本
資本主義は 常に活動の場が中心から周縁に移動しますが アートの世界も同じで 絵画市場も周縁に広がっているそうです 中心はヨーロッパで 周縁はアメリカから中国へ移っています 特に最近の中国では 美術品が重要な投資の対象になっているそうです 美術市場はアメリカに次ぐ規模で やがて追い抜くだろうと言われていて 絵画のオークションでの取引額も世界2位 国を挙げて文化政策に取り込んでいて 美術館建築 アートフェア開催が目白押しで また 中国の現代アート作品の値段が高騰していて 作品の年間落札額上位10作品の6つが 中国人の作品だそうです うーん 美術ビジネスの分野でも 中国オソルベシなのですね さらに 欧米や中国は オークションなどで 自国の美術品に高い価格をつけて その価値を高め それを世界に示して文化的優位性を誇示し 美のスタンダードを握ろうとする 世界の覇権を握るには 軍事力 経済力だけでは不十分で 最後には文化の力が必要なことを 知っているのです 山本さんは 根本から基準 ルール 価値を変えることは 過去に覇権をとった民族にしかできない と指摘されます そうした国では 歴史的に価値の破壊と再構築を繰り返し行っていて 新たな価値をグローバルスタンダードとして 世界に広げている では 日本はどうなのでしょう? 残念ながら 経済でも美術でも 周縁の中心から外れてしまったようです 日本の芸術・文化政策は遅れていて 美術館などのハコものを作っておしまいで 中身のソフトの戦略がなく 政策の決定は国内力学に左右され 世界的な戦略 視野に乏しい 他国は 自国をアートの中心にすべく努力し 文化政策で外交しているのに 日本は文化 経済 政治が 有機的につながっていない そんな日本の 自国の芸術に関する低い意識を端的に表したのが 日本がバブルに浮かれていた時に オークションでゴッホを買い 雪舟を買わなかったことで 哀しいことに 明治以来の脱亜入欧意識が染みついていて 自国文化の価値を高めようという意識を 持つことができない うーん ちょっと 耳が痛い(苦笑) さらに山本さんは 日本文化の歴史は近代で断絶してしまっている と指摘されます それは 明治以降の急激な近代化による影響によるもので あらゆるものが合理性や有用性を重視されたあまりに 日本文化の本質や良さが忘れられてしまった というのです たとえば 茶道は お作法のみを重視する習い事に形骸化してしまい わびさびの精神は置き去りにされている だから 明治以降の手本とされてきた 近代原理が行き詰まっている今こそ 近代以降の価値観を見直し 江戸時代の価値観に回帰するのがよい と主張されます 大量生産を見直し かつての手法に習い 日本独自の手のこんだ付加価値の高いものを作る 経済が縮小しようとしている今こそ 江戸以前の本当の日本の伝統を知り かつての日本人の 自然との関わり方 関係性を見直すべきである 近代以降に作られたもので 美しいものは少ない とまで言い切られます 厳しいけれど 的を得たご批判だと思います でも言うは易しかな? とも思ってしまいます 価値観を変えることって そんなに簡単なことではないし ましてや 一度おいしいさを味わってしまった 便利な生活を敢えて捨てて 昔のある意味で不便な生活に戻るのは 簡単ではないと思います 有用性 合理性への過度な固執から脱却して 日本文化の精神的な面を再認識することは 確かに重要だと思いますが 相当な覚悟が必要な気もしてしまいます でも 中国の 文化に対する姿勢を見聞きするに及んで 日本の文化政策の現状は さすがにまずいのではないかな と感じました どうしてこんなに 近視眼的になってしまったのでしょうね?
高橋医院