脳卒中でいちばん頻度の多い
脳梗塞について説明します

<脳梗塞とは?>

@どんな病気?

さまざまな原因により
血管の中に 動脈硬化が原因で出来る血栓が出来たり
他の場所から血の塊の塞栓が飛んできたリして

動脈硬化による血栓形成を説明する図

それら血栓 塞栓が脳血管に詰まることで 
血管の狭窄 閉塞が生じ
脳組織に血液が流れなくなり
虚血状態が起こり 神経細胞が死んでしまう

脳の血管の詰まりにより脳梗塞が生じることを説明する図

そのために 
さまざまな神経症状が現れてくる病気です


発症してから4~6時間以内までなら
血管が詰まって死んだ部分の周囲(ペナンブラ領域)が
虚血から回復できるので

ペナンブラ領域の場所を示す図
ペナンブラ領域が時間経過とともに減少することを示す図

この時間帯が 
血流再開を目指した超急性期治療のリミットになります


@出血性梗塞

脳梗塞では 
「出血性梗塞」という病態が起こることがあります

脳梗塞の発症で生じた二次的線溶亢進や
血圧の変動の影響で
脳血管に詰まった血栓が移動したり 断片化して
血管が再開通して 
血流が再灌流することがあります

しかし 血管の閉塞が生じた部位が
ダメージを受けて変化したあと
そこに血流の再灌流が起きると
そこから出血してしまい

「出血性梗塞」が生じて
脳浮腫 ヘルニアに進展して予後不良になります

再開通例の40%が
出血性梗塞に移行するとされています

治療の際に充分注意すべき点です


<疫学>

@日本人は脳がやられやすい

日本では欧米と異なり
脳卒中の頻度が心筋梗塞の3倍多いのが特徴です

日本では脳卒中の頻度が高いことを示すグラフ

心臓より脳の血管の方が詰まりやすい


@昔は脳出血が多かった

1960年代には
脳卒中は 全体の死因の1位で
脳出血が約77%を占め 
脳梗塞は約13%でした

塩分のとり過ぎで
200mmHg以上の高血圧になり
脳出血を起こして亡くなる人が多かったのです


脳梗塞の原因では
高血圧の関与が大きいラクナ梗塞が多く約40%で
動脈硬化が関与するアテローム血栓性梗塞は約20%でした

脳出血 脳梗塞の発症頻度の経時的変化を示すグラフ


@今は脳梗塞が増えた

それが2000年代に入ると
高血圧の早期発見 薬や減塩での
血圧コントロールの効果で
脳卒中の死亡率は第3位まで低下し
現在は第4位です

脳出血は約17%まで減りましたが
逆に脳梗塞は約73%にまで増えています

脳梗塞の原因では
動脈硬化が原因のアテローム血栓性が33%と増え
ラクナ梗塞が31%と減少し
心原性が28%と増加しています

脳梗塞の種類別の発症頻度を示すグラフ

食生活の欧米化で動物性脂肪をとり過ぎ
脂質異常症 糖尿病 肥満などが増加して
動脈硬化が進み
アテローム血栓性が増加しました

また 
加齢による心房細動の有病率上昇を背景に
心原性の増加が認められています

脳卒中の死亡例の約60%が脳梗塞です

発症率は低下しているものの
低下率は鈍化していて
男性では2000年代になってむしろ増加傾向にあります

患者数は272万人で
高齢化にともない 
今後も増加すると見込まれています


@患者さんの性差・年齢差

1000人当たりの発症率は 
男性4.2人 女性2.1人で
全体として男性が約60%を占めています

発症年齢は
男性が68.7歳 女性が73.6歳で
女性は年老いてからの発症が増えるようです


年齢 性別ごとの脳梗塞発症率を示すグラフ


@発症する場所

自宅での発症が80%で最多で

日中の活動時の発症が44% 
安静時34% 就寝時13%

となっています


@入院を余儀なくされる率 入院期間

入院治療率は
がん 心疾患より多く第1位で15.9万人
多くの場合は 
発症したら入院して治療することになります

入院期間は
他の疾患より長く 平均3ヶ月で最長です

脳梗塞の入院期間が長いことを示すグラフ

後遺症に対するリハビリなどがありますから
どうしても入院期間が長くなります


このように脳梗塞は
減少傾向にあるとはいえ
まだまだ日本人にとって大きな脅威であることは
間違いありません
高橋医院