4年ぶりの
ミハイロフスキー劇場バレエ 日本公演

オーロラ姫のキャストを
ミハイロフスキーの看板プリンシパルのペレンさまから
若いソボレアさんに変更し
カラボスに あのルジマトフを配したのは

この舞台の振り付けをした
ミハイロフスキー劇場の芸術監督を務める
ナチョ・ドゥアドさん


ドゥアドさんの眠りの森の美女は
これまでに見たものとは
雰囲気が少し異なり
あかぬけたモダンな雰囲気がしました

眠りの森の美女は 古典的な演目で
バレエ団による演出の差異はあまりなく
定番を安心して楽しむという感じがあったので
とても新鮮な感じでした

ナチョ・ドゥアドさんは
スペインのバレンシアで1957年に生まれ
ダンサーとして
さまざまなバレエ団で活躍されたのちに

ナチョ・ドゥアドさん

振付師としての才能を開花させ
スペイン国立ダンス・カンパニーの芸術監督を経て
2011年からミハイロフスキーの
バレエ芸術監督をされています

演出するナチョ・ドゥアドさん

ミハイロフスキーが
外国から芸術監督を招くのは
初めてだったとのこと


プログラムでは ドゥアドさんご自身が
どのようにして 
この眠りの森の美女の演出を工夫されたか
語られていました

最初は 
オリジナルのプティバのオーソドックスな演出を
継承しようと考えたそうですが
やがて自分のオリジナリティーを
出したくなったそうで

具体的には 
ダンスシーンを多くしたそうです

ダンスで登場人物のキャラクターを表現し
他の登場人物たちとの関係性を語らせたいと考え
これまでの演出では
踊ることがなかった脇役の人も含め
どの登場人物にも
それぞれが語るダンスを準備したとのこと

オリジナルのプティバの時代には
ダンスシーンの合間にマイムを取り入れて
ダンサーが休憩できるようにする必要があったけれど

今はダンステクニックが進化したうえに
ダンサーのフィジカルも昔に比べて強くなったので
色々なダンスを前面に押し出せるようになり
パフォーマンスの可能性が広がっている

と語ります

語るナチョ・ドゥアドさん

なるほど 
確かにいつもの眠りの森の美女より
スピード感もありアクティブな感じがしました


プログラムでは
舞踏評論家の長野由紀さんが
ドゥアドさんの振り付けについて

優雅にしてスリリング 
しとやかにしてダイナミックな
これまでにはなかった美の瞬間を作り出していて
よく訓練された 伸びやかな動きが随所に見られる

と書かれていました

そう スリリングなダイナミックさ
さすがにプロは
的確な表現をされるものです


でも ロシアはバレエ大国ですから
伝統への自負が極めて強く
容易に外国人を受け入れない空気が強かったそうで

そんななかで
オリジナルな振り付けを試みたドゥアドさんは
意外に苦労されたのかもしれません


書き手はドゥアドさんの振り付けを
伝統を踏襲しつつ
奇を衒わないアレンジを加えたもので
とても良いと思いました


そうそう 第3幕では
こんなネコのカップルも登場しました

ネコのカップル

メスネコさんは 
自分のダンスが終わっても
オーロラ姫や王子のダンスを
後方で見守る王様のそばにいて

ときどき「かまって!」と
王様にちょっかいを出す仕草をして
笑えました

ドゥアドさん ネコ好きかな?(笑)


で 隣を見たら
ネコの様子をしっかりと
オペラグラスで見ている方がおられました(笑)


また この舞台の衣装や舞台装置も
従来の眠りの森の美女のオーソドックスなものと異なり
カラフルで品の良い色合いやデザインで
とても印象的でした

印象的な衣装や舞台装置

デザイナーは
セルビアのベオグラード出身の
アンゲリーナ・アトラギッチさん

アンゲリーナ・アトラギッチさん

ドゥアドさんも
彼女の舞台美術の力で
おとぎ話の幻想的な世界が見事に作り出された
とコメントされていました

幻想的な舞台美術

古典バレエの舞台装置は
安定した ある意味で味気ないものになりがちですが

アトラギッチさんのデザインは
現代風の眠りの森の美女に
ふさわしいと言えるでしょう

美しいアトラギッチさんのデザイン

ということで 
振り付けでも 衣装や舞台装置でも
古典バレエの名作が 
現代風にアレンジされていて

見ていて安心というより心躍る感じがして
新たな世界を見せていただいた気がしました


ナチョ・ドゥアドさん

また気になるバレエ演出家を 
認識してしまいました!

 

高橋医院