ガブリエルが語るポスト構造主義2
マルクス・ガブリエルによる哲学史レクチャー 哲学の世界も栄枯盛衰 構造主義に代わり ポスト構造主義が主流になってきます <ポスト構造主義> フランス領アルジェリア出身のユダヤ系フランス人の ジャック・デリダが唱えた 「脱構築」を中心概念とする考え方です *思想を定着させない 構造を固定化させない *自然でないものを 自然であるかのように見做してはいけない *歴史や技術制度や社会により条件づけられたものを あたかも所与の自然のように見做すことはしない ことをモットーとして 時間 言語といった 誰もが自明と考えている思考の枠組み 概念を揺さぶり その限界を見せつけるとともに シンプルに鮮やかに分析しました 彼が特にこだわったのは 言葉の概念です 言葉は 文章 文字 言葉 トーン 表現といった 細かな単位から成り立っていて 常に変化していて 安定した普遍なものではない こうした細かい単位はどうつながっているのか? なぜ そこに言語があると思えるのか? 安定した言語などは存在せず 言葉は定着されず変化し続ける 一方 時間の概念にもこだわります 無限に小さく分解していくと 現在は存在し得なくなる 今と言った時 今はもうない 今を突き詰めると 時間は分解してしまい 過去も未来もなくなる そして 差延 という概念にたどり着きます 存在するのは言語ではなく 差延 である それは 言語や思考のフレームをずらしていく試みで 差異 と 遅延 を意味する こうした思考の果てに まだ存在していない未来が 現在に構造を与える 現在から未来に向かうのでなく 未来から現在が規定される というアイデアに達します ポスト構造主義は 西洋近代の基本をなす合理性の原理そのものを 問い直し 破壊しました 書く・話す 現在・過去 進歩・未開 歴史・構造 といった概念が ことごとく否定されたのです 当時 ソビエトと世界の覇権を争っていたアメリカは 科学による物質的進歩を象徴する国でした ソビエトの思想信条である唯物論に対抗する アメリカのイデオロギーは まさに科学至上主義だったのです 資本主義と科学技術の進歩により 人類は救済されるという考え方で 歴史 構造 時間 といった概念が必要となります 科学至上主義では こうした概念がないと 現実を理解できないのです しかし デリダが言うように 現実が常に変化しているのなら 現実を捉えることはできません 構造がシステムとして機能し始めると 人はシステムの奴隷になってしまいます だから 構造をずらし続けないと自由は得られません これが ポスト構造主義が目指し 問いかけたことです
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