原発性硬化性胆管炎の診断と治療
原発性硬化性胆管炎・PSCの 診断 治療について解説します <診断> @IgG4関連硬化性胆管炎の除外 PSCの診断で大切になります IgG4関連硬化性胆管炎については 次回以降に説明しますが PSCとIgG4関連硬化性胆管炎は 硬化性胆管炎の2大スターと言えます 大部分のIgG4関連硬化性胆管炎は 自己免疫性膵炎を合併しますが PSCでは合併しないため 自己免疫性膵炎合併の有無が参考になります IgG4関連硬化性胆管炎の大きな特徴である 血清IgG4の高値については PSCでも およそ10%強の症例はIgG4値が上昇している一方 IgG4関連硬化性胆管炎でも 10%程度の症例はIgG4が基準値範囲内にあります @続発性(2次性)の硬化性胆管炎の除外 続発性の胆管炎には *胆道感染症による胆管炎(AIDSを含む) *悪性腫瘍 *胆道外科手術後 *胆管結石 *腐食性硬化性胆管炎 *先天性胆道異常 *Floxuridine動注による胆管障害 *虚血性狭窄 などがあり それらの存在を否定する必要があります PSCには 玉ねぎの割面のように見える 特徴的な病理所見を認めますが その同定は診断に必須ではなく 肝生検を行う意義は低いとされています @原発性胆汁性胆管炎(PBC)との鑑別 同じく慢性の胆汁うっ滞を呈する 原発性胆汁性胆管炎(PBC)とは *PSCでは PBCで90%に認められる抗ミトコンドリア抗体が検出されない *PBCでは肝内小型胆管が障害されるのに対し PSCでは通常肝内外の大型胆管が障害される という大きな違いがあるので 鑑別は容易です PBCについても あとで詳しく説明します 一方 PSCの診断時あるいは診断から1年以内に 胆管がんを合併している症例が多いことから PSCと診断した際には 胆管がんの合併を疑って入念に検査を行う必要があります <診断基準> 国の指定難病なので 公に示されるしっかりとした診断基準があり 診断はこの基準に沿って行われます IgG4関連硬化性胆管炎 発症の原因が明らかな2次性の硬化性胆管炎 胆管がんなどの悪性腫瘍 を除外することが必要である I大項目 A 胆管像 1) 原発性硬化性胆管炎に特徴的な胆管像の所見を認める 2) 原発性硬化性胆管炎に特徴的な胆管像の所見を認めない B アルカリフォスファターゼ値の上昇 II小項目 a 炎症性腸疾患の合併 b 肝組織像(線維性胆管炎/onion skin lesion) これらの項目のどれがあてはまるかで 確診 準確診 疑診 にわけられます <重症度> ALPが基準値上限2倍以上の症例 皮膚掻痒感・黄疸、非代償性肝硬変症状など有症状例は 重症と判定されます <治療> @薬剤 多くの場合はウルソデオキシコール酸(UDCA)が使用され これによってALP γGTPの値は下がってきます 値が十分低下しない場合は ベザフィブラートを追加することによって ALP γGTPはさらに低下することも明らかにされています しかし 予後改善効果は不明です @胆管ステント 胆道造影によって 胆管の強い狭窄が認められた場合には 内視鏡による胆管拡張治療が行われます @肝移植 進行して肝不全に陥った場合は 肝移植が唯一の治療法となります ビリルビンが常に3~5mg/dLを超えるような症例 非代償性肝硬変症例などでは 時期を逸することなく早い段階で移植外科医に相談し 肝移植の可能性を検討します 移植後5年生存率は75%と良好ですが 移植後の再発率が高いことが大きな問題となっています <経過 予後> 徐々に肝線維化が進行し 胆汁うっ滞性肝硬変へと至ります また 胆道がんの合併も稀ではありません 無症状のまま経過する場合 またウルソデオキシコール酸の服薬で 良好な経過をたどる場合があります 治療の効果が低い場合には 発熱や腹痛を伴う胆管炎を併発したり 黄疸が出現したりしながら病気が進行し 肝硬変へと進行します 2015年の全国調査によると PSCと診断されてから5年 10年後に生存している確率は それぞれ81.3% 69.9%で 肝移植を受けずに5年 10年後に生存している確率は 77.4% 54.9%です 診断時に症状がなかった患者さんに限定すると 5年 10年生存率は87.3% 66.5%で 若い患者さんに限ると91.3% 73.5%と予後は良いです 診断時の有症状 アルブミン低値 ALP高値が 予後不良に関連すると報告されています PSCの経過には かなり個人差が大きく 診断後急速に悪化していく症例も見受けられますが 診断後10数年以上たっても進行しない症例も存在します <日常生活の注意> 症状がなく軽症であれば 通常脂質制限は全く不要であり 脂溶性ビタミンを過剰に摂取する必要もなく 食事についても格別の注意は必要ありません 運動も含め 通常の生活をしてください
高橋医院