その血圧測定 手抜きじゃない?
高血圧の解説シリーズの最初に 血圧計のお話をします レトロな医院のブログで紹介したように 当院で使用している血圧計は水銀式ですが 今や水銀式血圧計は少数派になりつつあります 血圧の単位はmmHgですが この単位が水銀式血圧計の歴史を物語っています 1905年にロシアの軍医のニコライ・コロトコフが 現在の血圧の測定法を発見しました 彼は患者さんの上腕に腕帯(カフ)を巻いて 加圧して動脈を圧迫し そのあとカフを減圧し始めると動脈に血流が流れ始めて そこで音が生じることを見出し その音を聴診器で聞き取って血圧を測定したのです この血圧測定法は聴診器で聞き取るので 聴診法と呼ばれますが 発見者に敬意を表しコロトコフ法とも言われています ちなみに医学生の頃 内科診断学実習で初めて血圧測定をしたとき この音(コロトコフ音と言います)が なかなか聞き取れなくて 苦労した思い出があります(笑) 水銀柱は 当初から目盛として利用されていました というのも 水銀は比重が大きいので 押し上げるのにかなりの圧力を要します もしも水銀でなく水を利用して血圧を測ろうとしたら 4m以上もの高さの目盛が必要になります だから血圧の単位は水銀の元素記号のHgを使い 水銀を何mm押し上げられる圧力か ということでmmHg この水銀式血圧計は 使用している水銀の処理が問題となっているので 遠からず医療現場から姿を消す運命にあります 代わって医療現場で用いられているのが 電子血圧計です カフで上腕の動脈を加圧して圧迫してから 減圧するメカニズムは同じですが 測定者が聴診器で コロトコフ音を聞いて測定するのではなく カフに仕込まれたマイクロフォンが コロトコフ音をひろって点滅したときの 圧力計の目盛を見て測定します さらに1980年代半ばからは コロトコフ音でなく 動脈に血流が流れ始めるときに生じる 血管壁の振動(脈波)を カフに仕込んだセンサーが感知して検出する オシロメトリック法の血圧計が登場して 主流となりました この血圧計はシンプルな構造で 誰でも簡単に測定できます 聴診器の位置やカフの マイクロフォンの位置により コロトコフ音がうまく拾えず 測定誤差が出ることもないので 測定値に信頼性もあります また水銀柱でないので加圧の際に それほど力が要りませんし 聴診器で聞き耳を立てる必要もありません しかも測定値が数字として表示ざれるので 圧力計の針の動きを注意深く見入る必要もない 初めてこの方式の血圧計を使ったとき あまりに簡便で楽なので驚いたのを憶えています ただ このタイプの血圧計は 年配の患者さんからは受けが悪い 昔から行われてきた 腕にカフを巻いて そこに聴診器をあてて聴診する行為こそが血圧測定 と感じておられる患者さんにとっては 腕にカフを巻いて加圧するだけで 聴診器もあてず デジタル表示の数字を見るだけの行為は 手を抜いているように感じられるのかもしれません うーん 患者さんのそんな気持ちはわかるのですが、、、(苦笑) そうした患者さんの声を聞くと 当院で使用中の水銀式血圧計が壊れたら 次はどうするか考えてしまいます せめて測定結果が 数字でデジタル表示されるタイプではなく 医者にも患者さんにも見やすい 円形表示のこんなタイプが良いかな と思っていますが いかがでしょう? ちなみに 家庭での血圧測定は 診察室での血圧測定に勝るとも劣らぬほど大切ですが その場合は 手首でなく上腕にカフを巻くタイプが 測定誤差が少ないですし 結果が数字でデジタル表示されるタイプが わかりやすくてお勧めです 家庭での血圧測定の重要性については また詳しくご紹介します 皆さん 楽しいGWをお過ごしください!
高橋医院