腎臓と高血圧
腎臓と高血圧は 切っても切れない関係にあります 高血圧だと腎臓が悪くなるし 腎臓が悪いと血圧が上昇する お互いが悪い影響を与え合って 負のスパイラルが形成されてしまいます <腎臓が悪いと高血圧になる理由> 既にご紹介したように 腎臓は塩分(ナトリウム)を排泄・再吸収して 体内ナトリウム濃度を調節しています 腎臓が悪くなると 糸球体(血液をろ過して尿を作る部位)の ろ過機能が低下するので ナトリウムの排泄も低下して体内に蓄積します そんな状態で塩分を過剰摂取したら ますますナトリウムが蓄積し 既にご説明したように 浸透圧調整により細胞外液の水分量が増えますから 血圧が上昇します これが腎臓が悪くなると血圧が上がる 第一の原因です また腎臓が悪くなると血圧が上がる原因には ホルモンも関係します 腎臓はレニンという酵素を分泌します レニンは 肝臓で作られるアンギオテンシノーゲンを分解して アンギオテンシンⅠにします アンギオテンシンⅠは アンギオテンシン変換酵素(ACE)により アンギオテンシンⅡに変換されますが このアンギオテンシンⅡが ナトリウムのろ過量が減らし再吸収量を増やすので 血圧が上がります また アンギオテンシンⅡは 副腎に働きかけて アルデステロンという 腎臓でのナトリウム再吸収を促進するホルモンを 産生させます これらの機序により さらに体内にナトリウムが蓄積し 結果として血圧が上がります もともとレニンは 糸球体への流入血液量が少ないと たくさん分泌されます たくさん分泌されたレニンが アンギオテンシンⅡを介して血圧を上げて 糸球体に流入する血液量を増やして どんどんろ過をして 体内の不要なものを排泄させようとするわけです しかし全身の血圧は正常でも 糸球体に入る血管に動脈硬化があると 流入血液量は減りますから 腎臓は血圧が低いと勘違いして レニンをたくさん分泌し さらに血圧が上がります このように レニン・アンギオテンシン系は 血圧を上昇させるため アンギオテンシンⅡの働きを阻害する アンギオテンシン受容体阻害薬(ARB) アンギオテンシンⅡへの変換を阻害する アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬) が 代表的な降圧剤として 多くの高血圧患者さんに処方されています また慢性腎臓病があると 生理的な夜間の血圧低下がみられなくなり 狭心症や心筋梗塞の発症リスクが高まると 言われています <高血圧が腎臓を悪くする理由> どうして高血圧だと 腎臓が悪くなるのでしょう? 慢性的な腎障害が生じる3大原因は *糖尿病 *慢性糸球体腎炎 *高血圧 です 高血圧による腎障害は 腎硬化症と呼ばれ 持続する高血圧により 腎臓の血管に動脈硬化が起こり 血流量が減って腎臓にダメージを与えます 高血圧患者さんの糸球体のろ過機能が 加齢とともに低下するスピードは 高血圧がない方の10倍以上と報告されています そして腎臓が障害されると 上記の機序によりさらに血圧が上がり 悪循環が生じます このように 腎臓と高血圧は悪循環系を形成しているため 腎臓が悪い人は 常に高血圧発症の注意をしなければなりません 尿にタンパクが出ている人が高血圧になった場合は 通常の高血圧よりもより厳しい 130/80 mmHgを治療目標にします 一方 高血圧の人は 常に腎機能低下に注意しなければなりません そのためには 尿にタンパクが出ていないか定期的に検査することが 大切です 高血圧で治療をされている方は多いですが 高血圧により腎臓が悪くなることは なかなか実感できないと思います だからこそ気をつけて 悪循環に陥らないように注意しなければなりません 高血圧で治療をされている方は 是非いちど ご自分の腎臓 特に尿タンパクの検査について 主治医に相談されてください
高橋医院