尼寺へ行け!
「芝居は お互いの間に広がる空間の重さを感じることなのよ あなたはそれがわかっていない」 人と人の間にある空間の重さか、、、 「人と人の間」については 精神科医を志していた医学生のときに 少しは考えたことがありましたが その間に広がる「空間の重さ」なんて 思いついたことすらありませんでした アーティストが発する言葉はいつも新鮮で そして(そうでなければ困るけれど) いつも非日常的です 女優の満島ひかりさんが 初めてシェークスピア劇に挑む その舞台稽古中の彼女の心の葛藤を描いた ドキュメンタリー番組を見ました 芸術家の内面に切り込もうとする ドキュメンタリーは好みです それに まだ一度もきちんと芝居も映画も 見たことがないのですが プロモーションビデオなどで 彼女の存在は気になっていました 今回 彼女が挑戦するのは 蜷川幸雄演出のハムレット そう あのオフィーリアを演じます! それを聞いただけで期待感が膨らみますね(笑) 画面に登場してきた蜷川さん 体調を崩されているようで 俳優へのダメ出しの際に 灰皿がしょっちゅう宙を飛んでいた 往年の激しさは身を潜めていますが 眼光の鋭さは 逆に凄みを増しているように見えます 稽古前に満島さんは 「怖い 緊張している」 と思わずこぼします そして初稽古を終えたあとの感想は 「芝居を始めた頃を思い出す つかむところがなにひとつない」 そんな彼女を見つめる蜷川さんは 「彼女のなかに眠っているものを オフィーリアを演じることにより解放させたい」 と語ります いやー 演出家と役者の関係って 深くて 怖くて でも傍から見ていると興味深くて、、、(笑) 自分なりのオフィーリア像を探す葛藤の中で 彼女はこんなことを言います 「自分の生理が あのセリフを語らせない」 「相手との”間”をどうやってとるか 台本に書いてある悲しみを演じるだけでは 相手との関係を表現できない」 うひゃー! 引き込まれます?(笑) そう 大切でそして難しいのは 「ヒトとヒトとの間」ですよ 一方の演出家は 役者にこう語りかけます 「現代の日本に生きる我々が シェークスピアの古典を演じる意義をどう考えるか? セリフの言葉に真摯に向かい合い それを身体を通してどう語るのか?」 厄介なことに こういう禅問答もどきは嫌いではないのですよ 思わず食い入るように テレビ番組の世界にのめりこんでいきます(苦笑) 長くなりそうなので 続きは次回に、、、
高橋医院