中央区・内科・高橋医院の
お酒と健康に関する情報


アルコールと肝臓の関係の解説シリーズを始めます

いよいよ”左利き”の本領発揮です?(苦笑)

酒を飲む肝臓のイラスト

学会が定義するアルコール性肝障害は 
以下の基準を満たす場合です

常習飲酒家(日本酒3合以上/日)
 または大酒家(日本酒5合以上/日)
 5年以上継続していて(女性はその2/3程度)

*4週間の禁酒によりGOT GPTが80IU/L以下になる
(禁酒開始前の値が100IU/L以下の場合は正常値になる)

*次のうち少なくともひとつが陽性
・4週間の禁酒により
 γ-GTPが禁酒前値の40%以下
 または正常値の1.5倍以下になる
・禁酒により肝の大きさが著明に縮小する

かなりの量のお酒を長期間飲んでいて 
肝機能検査値が上昇して
酒をやめることにより検査値が改善する場合
ということです

ただし遺伝的要素も強く
同じように飲酒を続けていても
肝機能の悪化を認めない方も多くいます

大丈夫ですか?  
皆さんの飲酒習慣は診断基準に該当しませんか?


5年以上飲んでいるけれど
そんなに沢山は飲んでいないから大丈夫
と安心されている方もおられるかもしれませんが
安心するのはまだ早い!

この基準は「アルコール性肝障害」の基準であって
飲酒による肝臓へのダメージは
もっと早期に脂肪肝という形ででてきます

そして飲酒を継続していると
脂肪肝から肝障害 肝硬変へと
進展していくことがある

ですから 
肝障害が出てきたら もうやばいのです

肝障害の進展を示すイラスト

アルコール性肝障害の進展様式は こんな具合です


<アルコール性脂肪肝>

飲酒を続けると
最初におこる肝障害が脂肪肝です

アルコールにより
肝臓での中性脂肪の合成が高まり
肝内に脂肪が蓄積します

自覚症状がないので
3合以上の飲酒をついつい続けていると
20%はアルコール性肝障害に進展しますが

お酒をやめると自然に改善します

脂肪肝の組織像

スライド右に示すように 
肝内に脂肪(白い空胞)が溜まってきます


<アルコール性肝炎>

普段からの飲酒量が多い人 
既にアルコール性脂肪肝の人が
飲酒量が急に増したときなどにおこります

急性肝炎のように
倦怠感や食欲不振などの自覚障害があらわれ
肝機能検査値が著しく上昇し 
入院加療が必要なこともありますが

お酒をやめることで徐々に改善していきます


<アルコール性肝線維症からアルコール性肝硬変へ>

アルコール性肝炎を起こしたあとも
大量飲酒を継続していると

肝細胞が壊れる状況が繰り返えされ 
肝細胞が壊れたあとは線維に置き換えられます

やがて線維が蓄積してくると
アルコール性肝線維症になり

一部の人はその状態から
肝硬変に進展してしまいます

肝硬変の組織像

スライド中央を
上下に貫いている淡いピンクの部分が
壊れた肝細胞に置き換わった線維の部分です

こうした線維の束が肝内のあちこちに蓄積すると
肝内の血流障害が生じて 
肝細胞が正常な機能を果たすことができなくなります

そのため
アルコール性肝線維症の段階になると
お酒をやめても
なかなか改善しなくなってしまいます

ですから そうなる前
アルコール性脂肪肝の段階で
飲酒を控えていただくことが肝心です

そうすれば
もとの健康な肝臓の状態に戻ることができます

脂肪肝から肝炎 肝硬変に進展する頻度

上図に示すように大量飲酒が継続すると 
かなり高い確率で
脂肪肝→肝炎→肝硬変と進展してしまいます

そして最悪の場合 
肝硬変から肝細胞がんが起こってしまうのです


書き手はこれまでに
お酒がやめられずに肝硬変になられてしまい
腹水がたまったり 食道に静脈瘤ができて
日常生活に大きな障害が生じたり

肝不全(肝臓が機能しなくなった状態)や肝がんで
厳しい結末を迎えられた患者さんと何人もご縁を持ち
残念な思いをしてきました

アルコール肝障害を治すのは簡単です

ウイルス性肝炎のように 
インターフェロンも高い飲み薬も必要ありません

お酒をやめればいいのです

それが難しいのはわかっていますが
それでも お酒をやめるしかないのです

少し暗い気持ちになるようなことを
書いてしまい恐縮ですが

まだアルコール性脂肪肝や
軽度のアルコール性肝炎の状態の方は
それ以上進展することがないように

飲酒量を減らすか
減らせないならやめる

思い当たる節のある方は
どうかよろしくお願いします
高橋医院