すみません 前回 前々回に続いて 
もう一度だけEUのお話をします

前回は EU統合を支えているのは 
政治的理念なのだから
ドイツも簡単にはギリシャを排除しないだろう

という
水野さんが著書に書かれていた説をご紹介しましたが

アメリカ外交問題評議会が編集している雑誌の最新号の
「ヨーロッパの終わりなき混迷」という特集で
ブリンストンの政治学者が 
こんな記事を書いていました

ドイツの政治は変化している

もはやかつてのような 
EU統合に向けた強い意志は持っていないし
むしろ統合より共通ルールの厳格化を重視している

ドイツとEU

だから 
EUで長くタブー視されてきたメンバー国の離脱を
ドイツは最早 それほど問題視していない

この記事はさらに

ヨーロッパはドイツを中心とした中核と 
南欧などの周辺に
二分化されつつある
(フランスが中核に位置しているかは微妙な問題であるが)

と述べています

反EUのデモ

一方 
アメリカの大学で研究するギリシャ人国際政治学者は

EUの中核は 
ギリシャ危機をモラルの問題ととらえており
ヨーロッパの規律を失わないためには
ギリシャ経済はむしろ破綻すべきだと考えているが

周辺国の市民
EUの中核は 
かつてEUの指導者たちが有していた統合に向けての理念を
信じていないと思っている

と分析しています


さらに 
最近ヨーロッパ各国で勢力を伸ばしている
極右 極左政党
彼等の反EUの主張の展開に 
ギリシャ危機を利用しているとし
複数の次元でヨーロッパは分断されつつある 
と論を結んでいます

確かに最近の向こうのニュースを見ていると
東欧やイスラム圏からの
移民排除を声高に叫ぶ政治勢力の伸長
目覚ましいようですね

下図の濃い色で示された国
イギリス フランス デンマークなどでは 
極右政党が大躍進しているようで

フランスでは 
オランドの次の大統領は
ルペンと言われているそうで?

ヨーロッパにおける極右勢力の分布

そしてこの急増している移民
ギリシャ危機に優るとも劣らぬほどの 
頭の痛い課題になりつつあるようです


特にここ数日
シリア難民の小さな子供が
ヨーロッパに向かう途中で亡くなった事件が
ちょっと過剰反応じゃない?というほど
センセーショナルに報道されています

海岸で難民の死体を処理する兵士

WSJのHPに 
この事件を報ずるヨーロッパ各国の新聞の
1面が出ていましたが

上の写真よりもっとショッキングな写真が 
大きく出ていて驚きました

向こうではそうしたリアルな報道が
されているのですね


さて
ここでもドイツの対応が焦点になっているようで
移民が定住を希望する国として大人気のドイツが

移民の入口となるギリシャやイタリアに
EU主導の登録窓口を設置し
そこで
政治移民と
経済的豊かさだけを求めてやってきた移民を
選別する

ヨーロッパ各国に
数的に公平な移民受け入れ分担を求める

といった方針を提案しているそうで

こうした姿勢が 
自国の利益だけを優先しているように見えて不評だとか

でも 
もともとドイツはアジール法の下に
移民の受入れに積極的だったし
他の国と比べてもかなりの数の移民を受け入れている
実績はある

さらに 
確かに経済移民の数が増えると
ジモピーは職を奪われかねなくなり
そうなると上述の極右・極左勢力がますます勢いを伸ばして
社会全体が不安定になってしまうのも事実で

この問題に関しては 
ドイツだけを責めるのも酷なような気がします

やはり現実は 
さまざまなファクターが複雑に絡み合ってきて
頭で考えたきれいごとでは解釈しきれないですね

もちろん 
書き手は国際政治や経済には全くの素人なので
眼についた記事や論説を読み齧って 
上っ面を撫でているだけですが

EUはこの先どうなるのかな? という興味は大きい

EU加盟国の国旗

ちょうど書き手がスウエーデンで学んでいた頃が
EUが 統一貨幣のEUROが 
まさに生まれようとしていた頃で

個人的には 
ちょっとヨーロッパに対する思い入れもあります(苦笑)


近い将来行われる予定の
イギリスのEU脱退の是非を問う国民投票の結果も
気になります

イギリスは 
歴史的に見ても立派なヨーロッパのメンバーなのに
どうもEUに対しては一歩引いてみているところがあって
(ポンドは維持しているし)

海峡を隔てて大陸を眺めるという
地政学的な立ち位置による影響も大きいのでしょうが
それだけにより一層 
イギリスの判断は興味深いと思っています

イギリス首相の会見の様子

さて ヨーロッパ EU
いったい この先 どうなるのでしょうね?

個人的には フランスの動向に注目しています





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