甲状腺機能亢進症・バセドウ病
甲状腺機能亢進症・バセドウ病は 甲状腺疾患の約20%を占める 代表的な病気で 女性の200~1000人に1人が この病気に罹られています 男女比は1対4の割合で 女性に多い 男性患者は少ないけれど かかると症状が重くなり 治療が長引く傾向があるとされています 患者数のピークは30歳代前半で 30歳代が全体の過半数を占めますが 20歳代の発症も少なくなく 次いで40~50歳代の患者さんが多い <病態> 前回ご説明したように 自己免疫反応により TSHレセプターに結合する自己抗体(TRAb)が 作られます TRAbはTSHと同じように 甲状腺細胞を刺激する作用を持っているので その刺激により 甲状腺ホルモンが過剰に 合成・分泌されるようになり 多彩な症状が現れてきます 血中の甲状腺ホルモンが過剰になっても TRAbは作られ続け 甲状腺刺激が持続するため 血中甲状腺ホルモンが高い状態が続きます <特徴的な症状> *新陳代謝が活発になる *常にジョギングしているような状態で 脈拍が速い 動悸が気になって眠れない という人もいるほど *全身から吹き出るように汗を多くかく 暑がりになる *とにかく疲れやすい いつもゴロゴロしている *37.5℃前後の微熱がある *食欲が増加し いくら食べても満腹感が得られない *排便回数が増加する *体重が減る ・男性や年齢が高い人のなかで目立つ症状で ひどい場合は1~2ヶ月で 10kgもやせることがあります *手の指先が細かくふるえる 何かを持とうとするとひどくなる *眼球突出 ・はっきりわかるほど眼が出てくる人は 10人に2人ほどで 軽度を含めると40~50%の頻度でみられます *落ち着きが無く いらいら感や不眠になる こうした症状があるために 循環器疾患 高血圧 精神病 などと間違えられることもよくあります 若い人では 甲状腺の腫れを認めることがありますが 触ると軟らかく 痛くないのが特徴です <検査所見> *FT4が高値 *TSHが測定できないくらい低値 *TSHレセプター抗体・TRAbが陽性 甲状腺関連以外の項目では 代謝が活発になるので *コレステロール値が低下し *AST ALTなどの肝機能が高値を示し *骨量が減少するためALPが増加します <治療> 甲状腺ホルモンの合成と分泌を減らす薬 を内服します 甲状腺ホルモンを合成する ペルオキシダーゼの働きを抑える薬です *チアマゾール(メルカゾール) *プロピルチオウラシル (チウラジール プロパジール) がありますが メルカゾールの方がよく使われます 症状は2週間目くらいから 少しずつ良くなりはじめ 普通は1〜2か月もすればかなり良くなります この頃から メルカゾールの量を徐々に減らしていきます 早い人では1か月 遅い人でも3〜4か月後には 甲状腺ホルモン値が正常になり その次にTSHが正常となる やがて TRAbの量が少なくなっていき TRAbが消失すると 薬による治療の中止を考えることができます この状態に至るまでに おおよそ2年間ほど要し 実際に治療が中止できるのは 約50%程度です 治療を中止してから 2年以上再発が見られないのは70%で 再発する場合は 中止後1~2年以内がほとんどです TRAb値が高いままの状態で 薬を中止すると 60%の高い確率で再発しますので 要注意です ちなみに TRAb値は治療効果の予測にも役立ちます 治療を始める前のTRAb値が 15以下だと 治る確率は65〜75% 36くらいだと 50% 66くらいなら 約30% と言われています 薬の副作用としては *肝障害 3%ほど *かゆみ じんま疹 1%ほど *白血球減少(無顆粒球症) 0.5%ほど がありますが 一番重篤で注意を要するのは無顆粒球症です 2年間内服しても 抗甲状腺剤の中止が出来ない時は *そのまま継続して内服していくか *別の治療法に変更するか を考える必要があります 別の治療法としては *アイソトープ治療 *外科治療 などがあります それぞれに一長一短がありますので 専門医とよく相談されて 治療方針を決めると良いでしょう 実は 書き手も、、、(つづく:笑)
高橋医院