なんだか胸が痛い 
心臓の病気ではないか心配です

と言われて来院されて
心臓の音を聴診しようとシャツを脱いでもらうと

肋骨にそって
皮膚が赤く腫れて水ぶくれになっていて

帯状疱疹の皮疹

こういう状況に遭遇することは
度々あります

胸が痛くて心配な患者さんは
心臓の病気ではなく
帯状疱疹という
ウイルス感染症に罹っておられるのです


帯状疱疹

聞かれたことがあるでしょうか?
子供の頃によく罹る水ぼうそうの仲間です

今日は帯状疱疹について説明します

<どんな人が 何歳くらいで発症しやすいの?>

帯状疱疹には
年間1000人あたり5人程度が感染され

50歳を境にして 発症率は急激に上昇し

70歳以上では
1000人当たり10人以上となります

60歳代を中心に
50~70歳代に多くみられますが

過労やストレスが引き金となり 
若い人に発症することも珍しくありません

年齢別の帯状疱疹発症率


50歳以上の方や
糖尿病 膠原病 悪性腫瘍などの治療中で
免疫低下のリスクがある方が
罹りやすいとされています

帯状疱疹にかかりやすい人の特徴


<体のどんな部位に症状がでるの?>

身体の左右どちらか一方の知覚神経に沿って
帯状に皮膚症状があらわれるのが特徴で

症状は胸から背中にかけて
最も多くみられ

全体の半数以上が
胸回りや腹回りの上半身に発症します

帯状疱疹のできやすい部位

また
顔面 特に三叉神経第1枝の領域の眼の周囲
発症しやすい部位です

三叉神経領域


<どんな症状が どんな順番ででてくるの?>

@前駆症状

皮膚症状が現れる約1週間前から
ピリピリやズキズキとした電気が走るような
神経痛に似た痛みと軽い発熱を認めます

@初期の皮膚症状

そして
水疱状の充血したような紅い斑点
皮膚が隆起した丘疹が出現します

神経に沿って帯状に 
やや盛り上がった赤い斑点があらわれ
虫さされのような盛上りを認めます


@水疱の出現

ついで
帯状に粟粒大~小豆大水ぶくれ(水疱)が出現し
自覚症状は痒みから痛みへ変わっていきます

水ぶくれは
中央部にくぼみがみられるのが特徴で

その中身は
初めは透明で
やがて黄色い膿疱に変わります

@水疱が破れて ただれ びらんになる

それから6~8日間経過すると
水泡が破れて ただれ びらんになり
約2週間でかさぶたになります


かさぶたがはがれて治癒する

そして
かさぶたが剥がれて治癒するには
約3週間かかります

@痛みがとても激しいのが特徴

皮膚症状だけでなく 
強い痛みが生じるのが この病気の特徴です

帯状疱疹の症状の時間的経過

<合併症と後遺症>

@眼の周囲の帯状疱疹

角膜炎結膜炎などを 起こすことがあります

@頬部や下顎の周囲の帯状疱疹

耳鳴り 難聴 めまい 顔面神経麻揮 味覚障害 
などが生じることがあります

@帯状疱疹後神経痛

いちばん厄介な後遺症が
帯状疱疹後神経痛 です

通常 皮膚症状が治ると
痛みも消えますが

その後もピリピリする痛みが
持続することがあります

これは
ウイルスにより神経が変性したために生ずる痛みで

普通は3か月程度で治まりますが
3か月以上続くと
帯状疱疹後神経痛と診断されます

帯状疱疹に関連した痛みが出現してくる時期

長く続く人は
1年〜10年以上も痛みが続いて

高齢者では 
痛みのせいでうつ症状をきたしたり 
場合によっては食事もとれないほどになることもあり
生活に支障が生じてしまいます

帯状疱疹後神経痛の発生率は
約3% ですが

60歳を過ぎると
帯状庖疹患者さんの3人に1人が発症するとされ
初期重症な者ほど発症しやすいといわれています

ペインクリニックなどでの
専門的な治療が必要となる場合があるので
充分に注意すべき後遺症です

<治療>

抗へルペスウイルス薬の飲み薬で
治療します

抗ヘルペスウイルス薬は
ウイルスの増殖を抑えることにより
急性期の皮膚症状や痛みなどを和らげ
治るまでの期間を短縮します

さらに合併症や後遺症を抑えることも期待されます

抗ヘルペスウイルス薬の飲み薬は
効果があらわれるまでに
 2 日程度かかりますから

服用してすぐに効果があらわれないからといって
服用量を増やしたり途中でやめたりしないで
指示通りに服用してください

@早期治療の重要性

発病早期に服用を開始するほど
治療効果が期待できま

赤い斑点ができて
72時間以内に治療を行うのが鉄則
それが後遺症を防ぐことにつながります

ですから
 皮膚の症状に気付いたら
一刻も早く受診してください

帯状疱疹の初期治療の重要性を喚起するポスター


<日常生活の注意>

@できるだけ安静にしましょう

帯状疱疹は 疲労やストレスが原因となり
免疫力が低下したときに発症しますから

十分に睡眠と栄養をとり 
精神的肉体的な安静を心がけることが
回復への近道です

@患部を冷やさないようにしましょう

患部が冷えると痛みがひどくなるので
冷やさずにできるだけ温めて
血行をよくしましよう

ただし使い捨て力イロや温シッブ薬は
やけどやかぶれに注意して使いましょう

@水疱は破れないように気をつけましょう

水疱が破れると 
細菌による感染が起こりやすくなりますから
細菌による化膿を防ぐためにも
患部は触らないようにしましょう

@小さな子どもとの接触は控えましょう

帯状疱疹が他の人にうつることはありませんが
水ぼうそうにかかったことがない乳幼児には
水ぼうそうを発症させる可能性があります

さて ここまで読まれて

どうして疲労やストレスがたまると
帯状疱疹になるのだろう?

どうして帯状疱疹が子どもにうつると
水ぼうそうになるの?

と不思議に思われる方がおられると思います

そんなあなたは 鋭い!

次回は その疑問点の説明をするとともに
帯状疱疹を予防するワクチンについてご紹介します


高橋医院