健診結果が良くても糖尿病にご用心・その1
当院には 健康診断で 糖尿病に関して要治療とか要精密検査と指摘され 心配になって受診される方が多いのですが 先日読んだ日本内科学会誌(105巻3号 P383 2016)に 「たとえ血糖値やHbA1c値が正常範囲内でも 安心できない方がおられる」 という趣旨の総説が出ていたので ご紹介します この総説は 健診や人間ドックなどで得られた大規模なデータや 過去に発表された膨大な論文データを吟味して どのような方が糖尿病発症に注意しなければならないか をまとめています <どの時期にどれだけ体重が増加すると 糖尿病を発症しやすいか?> まだ糖尿病を発症していないけれど 最近太ってきたので心配 という理由で 相談にこられる方は少なくありません よく 若い頃の体重より10Kg以上太ると心配 といった話を聞きますが 具体的に いつ頃 どれくらい太ると 糖尿病発症リスクが高くなるのでしょう? 人間ドックで まだ糖尿病と診断されていない方を対象に @BMI値(肥満の指標:体重Kg/身長mの二乗 25以上が肥満)について *現在 *20歳のとき *人生で最大値 の各時点でのBMI値を調べ @BMIの変化量について *20歳時から現在まで *20歳時から最高体重時まで *最高体重時から現在まで の各期間の変化量を調べ その後 糖尿病を発症された方は 発症しなかった方と比べて どの値が いちばん違っていたかを調べると *人生で最大値のBMI値が 男性で26.1以上 女性で24.2以上に なったことがあり かつ *20歳時から最高体重時までの BMI値の変化量が 男性で4.6以上 女性で3.93以上ある方 が 糖尿病の発症リスクが高い つまり糖尿病になりやすいことが わかりました 以前 もとデブ・新デブといった話題を 紹介したことがありますが そのときに示唆したように 昔から太っていた方でも 20歳時と比べて BMI値がそれほど増えていなければ 糖尿病発症リスクはあまり高くないし 逆に 20歳時にそれほど肥満でなくても その後にBMI値がかなり増加することがあれば 糖尿病の発症に注意しなければならない と言えるようです ただし 若い頃(18~24歳)に急に体重が増えた方は 中年以降に急に体重が増えた方と比べて 糖尿病発症リスクが高いというデータもあり 若い頃から 体重増加には充分に気をつける必要が あるようです <糖尿病を発症する方の 発症前10年間の体重・血糖値の変化> 糖尿病を発症した方の 発症前の体重変化を振り返って検討すると 発症11年前には BMIは23.1と基準値内にあるのに その後 発症5年前までに徐々に上昇し続け 発症前の5年間は BMIが24前後の値を持続していました 一方 糖尿病を発症しない方は ずっと持続してBMIは23前後を維持し 変化はありませんでした 上図の 青丸は糖尿病を発症した方 白丸は発症しなかった方です つまり たとえBMI値が基準値内にあっても 軽度上昇が5年以上持続していると 糖尿病発症リスクが高まることが 示されました BMIが基準値内にあるからといって 安心できないということです 血糖値(HbA1c値)に関しては 糖尿病を発症した方は 発症10年前から5.6%より高値を持続し 発症1年前に急上昇していたのに対し 発症しない方は 5.3%前後を維持し 5.6%を越えることはありませんでした 上図の 青丸は糖尿病を発症した方 白丸は発症しなかった方です つまり 血糖値も体重と同様で 基準値内にあるからといって やや高目の方は 安心できないということです これまでの人生で すごく太ったことがあり 20歳時の体重といちばん太ったときの 体重の差が大きい方は 糖尿病発症のリスクが大きい そして 健診で体重や血糖値が基準値内にあっても やや高目の値を長期間持続している方は 要注意 ということで 皆さん 大丈夫ですか? 次回もこの話題を続けます
高橋医院