同じ性染色体でも 
X染色体とY染色体はずいぶん違います


@大きさ

ヒトのX染色体は 
Y染色体に比べてとても大きい

X染色体は
全染色体のなかでも
最大の7番染色体に次ぐ大きさですが

Y染色体はとても小さく
X染色体の
1/3ほどの大きさしかありません


X染色体とY染色体の大きさを比較した図


@存在するDNAの総塩基数 遺伝子数

X染色体が1億6300万に対し
Y染色体は5100万と1/3以下しかなく

タンパク質を作る遺伝子の数
X染色体は1098個と 
全遺伝子の5%程度もあるのに対し
Y染色体は 
わずか78個しかありません

=

@存在する遺伝子の働きの差異

しかもY染色体上には 
有効な遺伝子が存在しない領域が多く存在し
遺伝子密度は
他の染色体に比べて圧倒的に少ない

既に説明しましたように
Y染色体は男性になるのに必須な染色体ですが
そのわりには 
大きさも遺伝子数も 
とても貧弱です

Y染色体は 
確かに性の決定には重要ですが

女性はY染色体を有していなくても 
なんの不都合もなく生きていけるので
Y染色体には 
個体の生命活動に必須な遺伝子は
存在しないと言えます

=

一方 X染色体には 
生きていく上でとても大切な遺伝子が
存在しています

筆頭は 
免疫機能に関連する因子群の遺伝子
主だった免疫に関する遺伝子は 
ほとんどがX染色体上にあります

X染色体に存在する免疫に関する遺伝子

それ以外にも

血液を固まらせる因子 
筋肉を丈夫にする因子の遺伝子
知的発達や自閉症に関連する因子の遺伝子
色覚に関連する遺伝子

なども存在しています

一方 Y染色体上には
精巣を作るSRYという遺伝子 
これが性決定に最重要な働きを示しますが

他には 
精子を作るDAZという遺伝子
身長を決めるY成長遺伝子
(男性が女性より背が高いのはこの遺伝子のため)
歯のエナメル質を作る遺伝子
などがあるだけです

このように 

大きさも 
遺伝子の数も 
遺伝子の働きの重要性も

X染色体は
Y染色体のそれらを上回ります

どうもY染色体は分が悪いですね

男の分が悪いのは 
どこぞの家庭のようです?(笑)

@X染色体を2本持つ女性の方が適応能力が高い

実際に 
X染色体を2本持つ女性は
男性よりも倍の適応能力がある可能性が
示されています

小児医療が発達していなかった昔は 
女児より男児の死亡率がずっと高く

男性よりも女性の平均寿命が長いのは
女性がX染色体を2個持つため
とも言われています

@X染色体を2本持つ女性の方の不利益なこと

一方で 
X染色体を2個持つ女性が不利な面もあります

それは 女性は男性より 
自己免疫疾患が多く発症することです

自己免疫疾患とは 
関節リウマチや慢性甲状腺炎のような
自分の成分に対して免疫反応が生じて 
病気になってしまうもので

男性に比べて女性の方が 
発症率が高い病気が多い

自己免疫疾患について説明した図

この原因のひとつとして

例えば母親由来のX染色体を受継いだ免疫担当細胞が
父親由来のX染色体を使っている自分の他の細胞を
自分の細胞ではない(非自己細胞)
と認識する事により

その細胞を攻撃してしまうことで 
自己免疫反応が起こる現象が
想定されています

こうした現象は マイクロキメリズム 
と呼ばれていますが

実際に多くの自己免疫疾患において
マイクロキメリズムの存在が認められています

性染色体が関与する病気は 
他にもありますが
長くなってきたので次回に続きとします


高橋医院