長引く咳の原因として 
咳喘息に次いで多く 約30%を占めるのが

今日ご紹介する アトピー性咳嗽 です

慢性の咳の原因となる病気の頻度を示すグラフ

咳のことを 専門用語では 咳嗽(がいそう)といいます

<アトピー性咳嗽とは?>

アトピー性咳嗽

*20~40代の若い女性で

*花粉症などの鼻炎のある人に
 多い傾向があり

*風邪を契機に発症することが多い 

病気です

アトピー性咳嗽で苦しむ若い女性

咳だけが唯一の症状

*ホコリや冷気などの外部刺激により
 咳が出やすく

*就寝時 夜中から早朝にかけて多く

*冷気 暖気 喫煙 会話 運動などが 
 咳の誘因となります

鼻炎 副鼻腔炎を合併している方も多く
その場合は 
痰をともなう湿った咳になります

アトピー性咳嗽の診断基準


<アトピー性咳嗽と咳喘息の違い>

アトピー性咳嗽は 咳喘息と異なり 
ホンモノの喘息に移行することはありません

咳喘息との大きな違いは
咳喘息には有効な 気管支拡張剤が効かない ことです

アトピー性咳嗽では気管支拡張薬が効かないことを示す図

咳喘息と同じく 
アレルギー反応により病気が起こりますが

炎症・アレルギーが起こるのが 
肺に入る前の太い気管支が中心
咳喘息のように細い気管支では
炎症は起こっていません

気管支と細気管支の場所の違いを示す図

さらに 
病態の中心をなすのは
咳受容体の感受性が亢進していることで

咳喘息と異なり 
気管支平滑筋の収縮はありません

だから 気管支拡張剤が効かないのです

*気管支の過敏性亢進 
 咳受容体の感受性亢進はあるけれど

*気管支平滑筋の易収縮性はない

*炎症が起こるのは太い気管支で 
 細気管支は大丈夫

これがアトピー性咳嗽の病態の特徴で

同じアレルギーを元にして起こる咳喘息とは
似て非なる病気なのです

ですから 
治療に用いられる薬剤の種類も異なります

咳喘息のように気管支拡張剤は使われず

アレルギーを抑える抗ヒスタミン剤(H1受容体拮抗薬)
炎症を抑える吸入ステロイドが用いられます

アトピー性咳嗽と咳喘息の治療法の差異を示す図

繰り返しになりますが

気管支拡張剤の吸入薬を使って
*咳が改善すれば咳喘息
*改善しなければアトピー性咳嗽
と診断できます

そして 咳喘息のように
咳が改善したあとも
長期間にわたり治療を継続する必要はなく

薬を減量・中止しても 
再発することはありません

この点も 咳喘息との大きな差異です

どうして
咳喘息とは似て非なる 
アトピー性咳嗽という病気があるのか?

なぜ 太い気管支にだけ炎症が起こるのか?
気管支平滑筋の易収縮性がないのは なぜか?

とても 興味深いです


高橋医院