患者さんが自覚される 
胃食道逆流症 逆流性食道炎の代表的な症状は

胸やけ と 
TVコマーシャルで連呼されていた 呑酸  です


<食道に関連した症状>

胸やけは
胸が焼けるような感じ チリチリする痛み
と表現されることが多い

一方 呑酸は
酸っぱい 苦い液が胃から食道に上がってくる感じ
ゲップが出る
と訴えられることが多い

また これらの症状以外にも

食物が胸につかえる
吐き気がある

という表現をされる患者さんも多くおられます

GERDで自覚される症状をまとめた図

このような 
典型的な症状がある場合は
比較的容易に胃食道逆流症 逆流性食道炎
を疑えますが

なかには 
非典型的な症状で来院される
胃食道逆流症 逆流性食道炎の患者さんも
おられます


<食道外症状>

こうした非典型的な症状は 食道外症状と呼ばれ
胸やけ 呑酸などはなく 食道外症状のみを呈する患者さんは
少なからずおられるのです

GERDで自覚される症状をまとめた図2


<非定型的な食道外症状>

@食道外症状の代表例は 胸の痛み です

なんとなく前胸部のあたりが痛い 
違和感がある

それが何日間も続いているが 
どんどん症状が強くなるわけではない

痛みで前胸部を抑える人の写真

そんな訴えで来院された患者さんには
まず 狭心症や心筋梗塞のリスクを考えて 
心電図や血液検査をしますが

それらの検査で異常がない場合は
胃食道逆流症 逆流性食道炎を疑います

狭心症や心筋梗塞の
精密な検査である冠動脈造影で
異常を認めない症例の70~80%に 
胃食道逆流症がみられたとの報告もあり

その多くの場合は
胃食道逆流症の治療に用いられる酸分泌抑制剤により
胸痛は改善します


@喉がイガイガする 声が枯れる 咽頭痛

といった症状も
胃食道逆流症の食道外症状の代表例です

そうした症状の14%は
胃食道逆流症だったという報告もあり
酸分泌抑制剤で症状が改善することもあります

胃食道逆流症の食道外症状をまとめた図

@咳が続く 喘息のような感じ

びらん性胃食道逆流症では
上記の症状をともなう呼吸器疾患の合併率が
有意に高いことが報告され

慢性咳嗽患者の43% 
喘息患者の26%に
胃食道逆流症の合併を認めるとの報告もあります

但し 酸分泌抑制剤による呼吸器症状の改善効果は不明です

逆流性食道炎の存在を疑わせるさまざまな症状をまとめた図

@睡眠障害

背後に胃食道逆流症の存在を疑うべき症状です

寝ると 食道と胃の位置関係が水平になるので
胃酸が食道に逆流しやすくなるので
胸やけや呑酸といった症状が
起こりやすくなるため 夜中に目が覚めてしまう

胸やけがある症例では 
睡眠障害が多いと報告されており

胃食道逆流症に起因する睡眠障害は 
酸分泌抑制剤で改善することも
報告されています

睡眠障害と逆流性食道炎の関係を示す図

睡眠障害と胃食道逆流症の関連で興味深いのは

睡眠障害と食道のびらんの存在 重症度とは関連がなく

一方
食道粘膜にびらんや炎症をともなわないタイプの
胃食道逆流症で
睡眠障害が高率に認められることです

あとで詳しく説明しますが
びらんや炎症をともなわないタイプの
胃食道逆流症の病態には
食道の食道知覚神経過敏が関与すると推測されていて

睡眠障害が この食道知覚神経過敏を介して
症状を悪化させるのではないかと考えられています

また 肥満は胃食道逆流症のリスク因子のひとつですが
肥満による睡眠時無呼吸も
胃食道逆流症の病態に関与すると推察されています

GERDの原因をまとめた図


<問題なのは生活の質・QOLの低下>

このように 胃食道逆流症では 
さまざまな自覚症状が見られますが

いちばん問題なのは

こうした症状により 
患者さんの生活の質・QOLが低下することです

胃食道逆流症の患者さんは
高血圧 狭心症 更年期障害の患者さんより
QOLが低下していますし


GERDでは患者さんの生活の質・QOLが低下することを示す図
胸やけ 呑酸が重症になればなるほど 
QOLが低下します

しかし 治療により症状がなくなれば 
QOLは改善するのです

ですから 
典型的な症状を呈する場合はもちろんですが
非典型的な食道外症状を訴えられる場合も
的確な診断を行い 適切な治療を行うことが 
医者の腕の見せ所なのです

あ 最後 ちょっとエラそうでしたね
どうも失礼いたしました(苦笑)


高橋医院