ナトリウム
中央区・内科・高橋医院の
健康のための栄養学に関する情報
多量ミネラルの代表選手
ナトリウム について説明します
ナトリウムは
塩分 の主たる成分です
<働き>
@体液量の調整
後述する機序により
細胞外液量(体液量)を調整します
@神経細胞の興奮 情報伝達
神経細胞が神経伝達物質などで
刺激を受けると
細胞外に存在する
主たる陽イオン(プラスに荷電している)の
ナトリウムが細胞内に流入し
神経細胞が活動していない時は
マイナス状態にある細胞内の電位が
負から正に変換され
神経細胞が興奮するのに必要な
「活動電位」が生じます
こうして生じた
活動電位・電気的勾配を利用して
神経細胞の興奮 情報伝達が
起こります
@糖やアミノ酸の共輸送
糖やアミノ酸は
ナトリウムと一緒に
エネルギー非依存性に
細胞内に運び込まれます
栄養素を細胞内に取り込む現象に
ナトリウムは貢献しているのです
<体液量はナトリウム濃度で規定される>
@細胞内液と細胞外液
体内に存在する水分(体液)は
*細胞の中に存在する細胞内液
体重の約30~40%
*細胞の外に存在する細胞外液
体重の約20%
に大きく分類されます
細胞外液の約1/4は
血管内に血漿として存在しています
細胞内液と外液は
細胞の細胞膜により隔てられていて
両者間の
電解質や糖質などの物質の移動には
巧妙な調節機構が働いています
また
水分は後述する浸透圧により
両者間を移動します
@ナトリウムは細胞外液に多く存在します
55%は細胞外液
43%は骨
2%は細胞内液
に存在しています
細胞外液は
海水と構成成分が似ていて
ナトリウムとクロールが多いのです
この細胞外液のナトリウムが
血液の浸透圧を規定しています
ナトリウム量が多いと
浸透圧により
細胞内から細胞外へ水を引っ張り出して
細胞外液量が増えるのです
一方 あとで解説しますが
細胞内にいちばん多く存在するのは
カリウムです
<浸透圧とは>
生体内では
細胞内液と細胞外液の間に
ナトリウムなどのイオンや糖などの
分子の濃度に差があるとき
それをなくして同じ濃度にしようとして
細胞内外で水分が移動します
この水分の移動の原動力となるのが
浸透圧です
浸透圧を規定するのは
イオンや糖の分子の総和で
それが多いと浸透圧は高く
少ないと低い
細胞内外を隔てている細胞膜は
イオンや分子の通過は制限しますが
水は自由に通す性質があります
この性質を利用して
細胞内外の
イオンや分子の濃度が等しくなるように
つまり浸透圧が等しくなるように
水が勝手に移動するのです
細胞外の浸透圧が低いときは
細胞外から細胞内に
水が移動し
細胞外の浸透圧が高いときは
細胞内から細胞外に
水が移動します
<細胞外液のナトリウム濃度を調節するシステム>
ナトリウムは小腸から吸収され
吸収されたのと同じ量が尿に排泄され
出納のバランスが保たれています
細胞外液(血中)のナトリウム濃度を
調節するシステムとしては
下記のふたつのシステムが存在します
@レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系
*レニンは
アンギオテンシノーゲンを
アンギオテンシンIに分解します
*アンギオテンシンIは
アンギオテンシンI変換酵素により
活性の高いアンギオテンシンⅡに変換されます
*アンギオテンシンⅡは
腎臓の尿細管での
ナトリウム再吸収を促進します
また レニンは
副腎からアルドステロンを分泌させ
*アルドステロンは
遠位尿細管 集合管での
ナトリウム再吸収を促進します
このように
アンギオテンシンⅡとアルドステロンは
腎臓でのナトリウムの再吸収の促進により
血中ナトリウム量を増やし
その結果
細胞外の浸透圧が上がるので
細胞内から細胞外に水分が移動して
血管内の細胞外液量(血漿量)が増えて
血管内圧が高まることで
血圧が上昇するのです
こうしたことから
レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系は
降圧薬のターゲットになっています
高血圧症の治療で使われることが多い
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)や
アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は
このレニン・アンギオテンシン系の阻害により
降圧作用を発揮します
@抗利尿ホルモン バゾプレシン
塩分を多く摂ると
血中ナトリウム濃度が増えますが
その情報が脳に伝えられると
喉の渇きが自覚され 飲水行動が起き
下垂体後葉から
抗利尿ホルモンのバゾプレシンが分泌され
尿量が減少します
こうして細胞外液量が増え
血中ナトリウム濃度が
調整される仕組みも存在します
どうしてこういう仕組みがあるのでしょう?
ヒトのご先祖様は
大昔は海中で暮らしていたので
海が恋しい
そこでナトリウムを体内にできるだけ取り込み
それを保つことで
細胞外液を海水に似た成分構成にしようとした
そんな理由で
ナトリウムを溜めこみやすい体質に
なったのではないか
と言われています
<ナトリウムと高血圧症>
塩分を摂りすぎて
血中ナトリウム濃度が増加すると
上述した機序により細胞外液量が増え
血圧が上がります
高血圧症の患者さんが
塩分制限を求められるのは
こうした理由によります
新しい降圧薬が開発されても
高血圧治療の基本は
塩分制限なのです
高橋医院