インフラマソーム
ここで 自然炎症に関わる PRRとは異なる因子の インフラマソーム について説明します @炎症の仕掛け人 PRRの刺激を受けた 免疫細胞や実質細胞は IL-1 IL-18などの 炎症性サイトカインを産生して 炎症反応を起こしますが それら炎症性サイトカインは 細胞内では通常は活性化されず カスペース1 という酵素により切断されて はじめて活性型になります これは 炎症性サイトカインが暴走しないための 安全装置と言えます このカスペース1を活性化するのが インフラマソーム分子複合体です カスペース1を活性化して 安全装置を外す インフラマソームは いわば「炎症の仕掛け人」と言えます @インフラマソームも PAMP DAMPを認識して活性化する インフラマソームは *NLR(PAMP DAMPのセンサー分子) *ASC(アダプター分子) *カスペース1前駆体 の3つの成分により 細胞質内で分子複合体を構成しています インフラマソームも PAMP DAMPを認識して活性化し 認識する因子の違いにより *NLRP3 :コレステロール結晶 尿酸結晶 Kイオン 微生物の核酸 ペプチドを認識 *NLRC4 :細菌のタンパク質を認識 *NLRP7 :結核菌のリポペプチドを認識 *AIM2 :微生物の二本鎖DNAを認識 の4種類が存在します @インフラマソームが関与する疾患 インフラマソームは 炎症が起きるときに 短時間で複合体が形成され 炎症がおさまると すぐに分解されますが この分解サイクルに異常があると 慢性炎症が起きます インフラマソームが 細胞内にたくさんできすぎると その細胞は「パイロトーシス」という 特別な細胞の死に方で 死んでしまいます これが 強い炎症が続いたときに 組織が痛む原因のひとつです また 自己炎症性疾患と呼ばれる インフラマソームの異常活性化により 全身に炎症が起こるという 新たな病気の存在も明らかにされています @痛風 生活習慣病の一種である 痛風の病態には インフラマソームが関与しています 尿酸結晶により NLRP3が異常に活性化されるので 過剰な炎症反応が起こり 痛風発作が起きてしまいます 痛風発作の予防に使用される薬の コルヒチンは インフラマソームの機能を 阻害する働きがあるので 痛風の炎症 痛みを止めることが できるのです @NLRP3を活性化するDAMP 上述したように DAMPはNLRP3を活性化して インフラマソームを活性化し 炎症を起こします NLRP3を活性化するDAMPとしては *コレステロール *アスベスト *アミロイド などがあります コレステロールは 動脈硬化を起こし アスベストは 悪性中皮腫を起こし アミロイドは アルツハイマー病を起こします 興味深いことに 膵臓のβ細胞が産生する アミロイドポリペプチドが 結晶を作りNLRP3を活性化し IL-1を介してTNF-αが産生され インスリン抵抗性が起きる IL-1そのものが 遊離脂肪酸とともに β細胞にストレスを与え インスリン産生量を低下させる といったことが報告されています このように インフラマソームの異常活性化は 糖尿病の病態にも 関与しているようです
高橋医院