高尿酸血症と痛風
尿酸を 過剰に摂取したり 作られたり 排泄がうまくいかなくなると 血中尿酸値が徐々に増加してきます 通常体温の37℃では 尿酸は7.0 mg/dlまでしか溶けないので 7.0mg/dlを超えると 結晶ができてしまう可能性があります ですから 血中尿酸値が7.0mg/dlを超えると 高尿酸血症と診断されます <高尿酸血症が続くと痛風が起きる> この高尿酸血症の状態は いわば痛風の予備軍で 血清尿酸値が7.0mg/dlを越える状態が 数年間以上続くと 痛風発作が起こりやすいとされていて 高尿酸血症の患者さんの 10人に1人が痛風になると考えられています 尿酸値が高ければ高いほど 痛風になりやすいので 痛風発作がない 高尿酸血症の患者さんでも 尿酸値を積極的に低下させることが 重要です <痛風とは?> 痛風は 高尿酸血症が持続した結果 慢性に進行していく疾患で 発作時には 体内にたまった尿酸が結晶になって 激しい炎症を引き起こします そうそうたる歴史上の有名人物たちが 痛風で苦しんでいたようです 国王では アレキサンダー大王 プロシア国王フリ-ドリヒ大王 フランスのルイ十四世 宗教改革関係者では ルター 清教徒革命のクロムウェル 芸術家では ミケランジェロ レオナルド・ダ・ビンチ 詩人では ダンテ ミルトン 文豪では ゲ-テ スタンダ-ル モ-パッサン 物理学者のニュ-トン 生物学者のダ-ウィン 枚挙にいとまがありません しかし日本では明治時代までは 痛風で苦しむ人はいなかったようです 痛風が日本史に忽然と現れるのは 明治になってからで 実際に患者さんの数が増えたのは 戦後 それも1960年代になってからのことです 食生活の欧米化による 動物性蛋白の摂取量増加 飲酒量の増加 肥満などが 関与するとされています 昔は50代過ぎの男性に多かったですが 最近のピークは30代で 圧倒的に20代以降の男性に多い @女性の痛風 不思議なことに 痛風の患者さんの98.5%が男性で 女性はわずか1.5%に過ぎません 女性ホルモンのエストロゲンが さまざまな生活習慣病の予防に役立っていることを 解説しましたが 痛風でも エストロゲンが予防的な働きをしていて 腎臓からの尿酸の再吸収を抑え 排泄を促す働きがあるとされています ですから 血清尿酸値は閉経までは女性は男性より低いのですが エストロゲンが減少する閉経後は 女性の尿酸値が上昇し 女性の患者さんも増えてきて 高尿酸血症の頻度は 50歳未満で1.3%、50歳以上で3.7%です <日本の痛風事情> @痛風の患者さんはどれくらいいる? 現在の日本では 痛風の患者さんは 約80万人以上 予備軍の高尿酸血症の患者さんは 500万人以上いて 成人男性30歳以降の有病率は 痛風が1.7% 高尿酸血症が約30% なんと成人男子の10人中3人は 痛風予備軍です 確かに当院でも 尿酸値が高い患者さんは 多く通院されています @痛風になりやすい人 痛風になり易いタイプ というのがあり *思春期を過ぎている人男性 *肥満の方 *肉食やアルコールが好きな人 とくにビールが好きな人 *A型行動タイプの方 (管理職 科学者などに多い) 具体的には 行動的な人 活動性が高い 猛烈社員 積極的 意欲的 せっかち 攻撃的 有能 責任感が強い 楽天的 学業成績の良い人 頭の回転の早い人 課外活動などに活発な人 地域活動に熱心な人 *家族歴がある方 (痛風の30%以上は三親等以内に痛風の方がおられます) *ストレスを受けやすい方 *過度の運動をされる方 などの方が あてはまります @肥満と痛風 注意したいのは肥満で 血清尿酸値と肥満度は正の相関を示し 肥満度が高いほど 高尿酸血症や痛風の発症頻度が上昇すること が明らかにされており 体重減少が痛風発症の予防因子である との報告もあります なにかと肩身の狭い思いをさせられている肥満ですが 痛風においても 肥満は悪役のようです @ストレスと痛風 ストレスが多いと尿酸値が上がる理由は ストレスを感じるとアドレナリンの分泌が増え 腎臓の血管の収縮が起き 尿量が減少する結果 尿酸の排泄が減少するためと推測されています @運動と痛風 過度の運動により尿酸値が上昇する理由は 前回ご説明したように 無酸素運動により大量にエネルギーが使われると 尿酸のもとになるプリン体がたくさん作られるからです A型行動タイプの人で 尿酸値が上がる理由は うーん なんとなくイメージはできますが どうなのでしょうね? このあたりについては このシリーズの最後で また話題提供したいと思います 高尿酸血症と痛風のイメージが できたでしょうか? 次回は 高尿酸血症のタイプ 痛風発作 について解説します
高橋医院