尿酸の産生と排泄
尿酸のもととなるプリン体が 体内でどのようにして産生されるかを 前回説明しました では プリン体はどのようにして 尿酸に変換されるのでしょう? <プリン体からの尿酸合成を規定する キサンチンオキシダーゼ> 過剰に摂取・産生されたプリン体や エネルギー代謝により不要になったプリン体は 主に肝臓で キサンチンオキシダーゼ(XO)という酵素により 尿酸に変換され 血液中に排出されます キサンチンオキシダーゼは 肝臓 腎臓 心臓の血管内皮 十二指腸 乳汁をはじめとした 全身の組織の細胞に存在しており プリン体代謝の最後の2段階で ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸 と変換させる働きをします あとで治療のところで詳しく説明しますが このキサンチンオキシダーゼこそが 高尿酸血症の治療薬が作用する物質です <体内における尿酸の動態> さて 前置きが長くなりましたが 生体内における尿酸の動態 について説明します プリン体が代謝されて出来た尿酸は その産生と排泄のバランスがとれているため 生体内の総量(尿酸プール)は 常に一定(健康男性で約1200mg)に 保たれています 飲食物から摂取するプリン体や 新陳代謝や運動により産生されるプリン体の 量が多く 尿酸が産生過剰になったり あるいは 腎臓の機能が落ちて排泄低下したりして 産生と排泄のバランスが崩れると 血中尿酸値が高まり 高尿酸血症になります 尿酸値が7.0mg/dlを超えると 尿酸の結晶が析出してくる可能性が生じ 痛風のリスクがでてきますが 尿酸値が8.0mg/dlのヒトの尿酸プールは 通常量の倍に近い2000mgに増大しています <尿酸の腎臓からの排泄> さて 尿酸は1日に 尿中に約500mg(70%) 汗や消化液に約200mg(30%) 排泄されます 排泄の主役は尿です 高尿酸血症の患者さんに 1日に2リットル以上のお水を飲んでください と勧めるのは たくさんお水を飲んで尿を出して 尿酸を排泄してほしいからです 腎臓での尿酸処理はきわめて複雑です 腎臓は *糸球体という血液をろ過して原尿を作るパーツ *尿細管という血液と尿の物質交換 (血液から尿への分泌・尿から血液への再吸収) を行うパーツ にわかれますが (このあたりは 高血圧における塩分の再吸収の話題で解説したので 参照されてください) 尿酸は 糸球体でいったんは100%ろ過されますが その80~90%が尿酸管で再吸収され 糸球体でろ過された量の10%程度しか 尿に排泄されません 腎臓からの尿酸の尿中排泄が このように極めて能率が悪く 不可解なしくみになっている理由は 尿酸が多量に尿中に排泄できると 尿中の尿酸濃度が上昇し 腎結石や腎障害をおこしやすくなってしまうため 尿酸を少量ずつ排泄することにより こうした危険を防止しているのではないかと 考えられています @尿酸の排泄 再吸収に関わるトランスポーター さて 尿細管では尿酸輸送体(トランスポーター)が働いて 再吸収を行っています 現在までに 次の3種類のトランスポーターが 同定されています *URAT1 尿細管細胞の 尿細管腔側の細胞膜に存在し 細胞内の乳酸やニコチン酸などと交換する形式で 尿から尿酸を細胞内に再吸収します 高尿酸血症の治療薬の尿酸排泄促進薬は このURAT1の作用を抑制して 尿中への尿酸排泄を促進します *GLUT9 尿細管細胞の血管側の細胞膜に存在し 再吸収した尿酸を 細胞内から血管内の血液に戻します *ABCG2 小腸・腎臓をはじめとする多くの組織に発現し 尿酸を細胞内から細胞外へ分泌し 尿酸を排泄します 次回以降に詳しく解説しますが これらの尿酸トランスポーターの働きに異常があると 尿酸の尿への排泄が低下し 高尿酸血症の大きな原因になると考えられています また 尿酸トランスポーターの機能には 遺伝子多型が関与することも 明らかにされています (遺伝子多型については 以前に解説しましたので参照されてください) 体内での尿酸の動態を イメージすることができたでしょうか? 前回説明した 体内でプリン体から尿酸が産生されるプロセス 今回説明した 血液から尿に尿酸が排泄されるプロセス このふたつが 高尿酸血症・痛風の病態を理解するうえで とても重要です では 次回はいよいよ 高尿酸血症・痛風の解説をします
高橋医院