ワクチンの造り方
ワクチンは さまざまな方法で造られます <弱毒化生ワクチン> 人工的に感染性を低下させた 生きた病原体を使う 古典的なワクチンです BCG はしか 風疹 おたふくかぜ 水痘 などが弱毒化生ワクチンです 感染性を低下させる方法として *ウイルスや細菌を弱らせるような条件下で 動物の細胞の中で培養し続けることによって 大量の変異種をつくり そのなかから 増殖しても病気を引き起こさない種を選ぶ *遺伝子組換え技術を用いて低下させる といった方法があります 弱毒化生ワクチンを接種すると 体内で弱い感染が起こり 普通の感染に近い状態で免疫反応が生じます このように 免疫反応を起こさせる力が強いので ワクチン効果が長く継続し 接種回数が少なくてすみます また 粘膜免疫も誘導できます しかし 弱毒化したとはいえ 病原体の感染力は わずかながら残っていますから 抵抗力が落ちた人などに接種すると 元の病気と同じような感染が起こることが 稀にあります たとえば ポリオの生ワクチンは 440万回の投与で1回マヒが生じました 2012年後半から 不活化ワクチンに変更されています 製造費用は安く済み 安価ですが 病原体を増やすときに 鶏卵などで生きたまま増殖させるので 製造に長い時間を要します 最近は短い時間で増殖できるように タバコの葉を用いた増殖法などが 開発されています <不活化ワクチン> 病原体の感染能力を失わせて 製剤化したものです 百日咳 ヒブ 日本脳炎 インフルエンザ A型肝炎 不活化ポリオ などが不活化ワクチンです 病原体の感染能力を失わせる方法としては *加熱 *紫外線照射 *ホルマリン フェノール処理 などがあります 弱毒化生ワクチンと異なり 不活化してあるので 接種された体内で 実際に感染を起こす可能性は低く 安定性が高いので保存性が良いのが利点です 一方 病原体が体内で増えないので 生ワクチンよりも 免疫反応を起こさせる力が弱く 特に細胞性免疫を誘導しにくい ですから 1回の接種では充分な抵抗力が得られず 数回の接種を行う必要があります @アジュバント 免疫反応を高めさせるために 免疫増強作用を有するアジュバントを ワクチンに加えます アジュバントの添加により ワクチンに入れる抗原量や投与回数を 減らせますが 接種局所に炎症反応を起こさせ 熱が出たり赤く腫れたりします アルミニウム塩が 代表的なアジュバントですが 副作用が小さいアジュバントの開発が 進められています 不活化ワクチンは安価ですが 生ワクチンと同様に 病原体の増殖に時間がかかるので 製造に時間がかかります <トキソイド> 病原体の毒素を化学物質で処理して 免疫反応を起こさせる能力だけを残して 毒性を除去した物質です ジフテリア 破傷風が トキソイドワクチンです 病原体の感染そのものは防がませんが ワクチン接種により 感染した病原体が作る毒素の働きを 体内で止められるようになり 病気になるのを防げます 非常に強い免疫反応を 長期間維持することができます <遺伝子組換えサブユニットワクチン> 病原体から感染に関わる遺伝子を取りだし 発現細胞に遺伝子導入して その遺伝子産物のタンパク質(サブユニット) を作らせて 精製処理してワクチンに用います B型肝炎 帯状疱疹 ヒトパピローマウイルス のワクチンが この方法で作られます 免疫反応を高めさせるために アジュバントを用います このワクチンは 単なるタンパク質ですから 感染性はなく 病気になるリスクもありません 作製工程は試験管内で全て完結し 生ワクチン 不活化ワクチンのように 鶏卵などで病原体を増やさなくても良いので 時間がかかりません 安定性が高く 保存性が良いのが利点ですが 効果の持続が短い傾向があるのが難点です <多糖類・タンパク質結合型ワクチン> ある種の細菌は 細胞壁に存在する グルコース ガラクトースなどの多糖類に 免疫反応を起こさせる能力があるので これをワクチンとして使用したものです 肺炎球菌 髄膜炎菌 ヒブが このタイプのワクチンです 多糖類はBリンパ球しか刺激できず Tリンパ球の助けが得られないので 抗体は一時的にしかできません そこで 多糖類にTリンパ球を刺激するタンパク質を結合させて Tリンパ球の刺激を介して Bリンパ球を活性化させて 長期間抗体を作れるようにします このタンパク質は 体内で多糖類が吸着・固定する際の 土台としても働きます 不活化ワクチンの1種なので アジュバントを用いても 1回だけの接種では充分な免疫反応を惹起できず 何回かの接種が必要になります また 効果の持続時間も短い傾向があります
高橋医院