ワクチンって どういうもの?
新型コロナウイルス対策として いちばん期待されているのが ワクチンの開発です そこで 新型コロナのワクチン開発の 現状について紹介しますが その前に ワクチンについて説明させてください <ワクチンとは> 人類の健康に寄与した 最も偉大な成功例のひとつで ウイルスを完全に排除することができる 唯一の手段 と考えられています 2010~2020年の間に 2500万人の命が ワクチンにより救われています 多くの感染症に対して有効で 感染症を起こす病原体ごとに 固有のワクチンがあります 世間で「予防接種」と呼ばれているものです <どんなもの?> 細菌 ウイルスなどの病原体 もしくは 細菌毒素の 力を弱めたりなくしたりした 人工的に作りだされた製剤です 今は そうした古典的な製法で作られたワクチンに加え 新しい技術を用いて作られた さまざまなタイプのワクチンがあります <ワクチン接種の効能> ワクチンは 最もエビデンスがある免疫力増強法で 接種したほぼ100%に近い人に免疫が得られ 多くの場合 それが何年間も持続します ワクチンを接種すると 体内で病原体に対する免疫反応が生じ 抵抗力ができるので その病原体の感染を未然に防ぐことができます 実際に感染症に罹ったときに得られる 病気に対する抵抗力を人為的に生み出して その感染症に再度罹らないようにするわけです また 集団免疫の獲得を強力に手助けします 社会の多くの人がワクチン接種を受けると 抗体を持つ人が増えて 社会集団全体として その病原体に対する抵抗力を 持てることになります 社会の何%が抗体を持てば 集団免疫が成立するかは 病原体の感染力により異なりますから 病原体ごとに ワクチンの望ましい接種率が規定されます <ワクチンで予防できる病気> ワクチン接種で予防できる病気は VPD (vaccine preventable disease)と呼ばれ WHOが認めたVPDは 現在のところ 下記の26種類です @細菌による感染症 *コレラ *髄膜炎菌感染症 *ジフテリア *破傷風 *百日咳 *結核 *肺炎球菌感染症 *チフス *ヒブ感染症 インフルエンザ菌 @ウイルスによる感染症 *はしか(麻疹) *風疹 *インフルエンザ *おたふくかぜ *A型肝炎 *B型肝炎 *E型肝炎 *ポリオ(小児マヒ) *ダニ媒介性脳炎 *狂犬病 *水痘・帯状疱疹 *ヒトパピローマウイルス感染症 *ロタウイルス胃腸炎 *黄熱病 *日本脳炎 *デング熱 @原虫などの他の病原体による感染症 *マラリア <ワクチンの歴史> @エドワード・ジェンナー ワクチンと言えば ジェンナーです! 彼は1796年に 世界で初めてのワクチンである 天然痘ワクチンを開発しました 天然痘は 当時の世界を広く覆っていた 悲惨な伝染病でしたが ジェンナーは 乳しぼりに従事する女性が 牛痘には罹るけれど 天然痘にはならないことに気がついて 牛痘のウシの皮膚の水痘から得られた液を 人に接種することで 天然痘に罹らなくできることを 明らかにしました これが種痘です 種痘により 世界から天然痘は激減し 1980年にWHOは 地球上からの天然痘の撲滅を宣言しました ちなみに VaccineのVacは ラテン語のウシに由来しますが ジェンナーが 牛痘から天然痘ワクチンを作ったことから ウシにちなんだVaccineが 世界公用語になりました
もうひとつ トリビアネタを ジェンナーは自分の息子に 最初の種痘を施して試したとされていますが 実はなんと 実験台にされたのは 自分の息子でなく使用人の息子だったそうです! いやはや(苦笑) @ルイ・パスツール パスツールは 病原体を別の動物種に接種すると 感染を起こすけれど 病原体の感染力は弱まっていることに 気がつきました そして1885年に 狂犬病をウサギに感染させ 感染したウサギの ウイルスが存在する脊髄を取りだし 乾燥させて感染力を弱めたものを人に接種すると 狂犬病が予防できることを明らかにしました これが 世界初の弱毒化生ワクチンです ワクチンとは直接的な繋がりはありませんが コッホのもとで研究していた北里柴三郎は 破傷風毒素を投与したウサギの血清を 別のウサギに投与すると 破傷風感染が予防できることを発見し それを見ていたベーリングは ジフテリアに感染した患者さんの血清を 健康な人に投与すると その人はジフテリアにならないことを発見しました これらは ワクチンの理論的根拠を説明する発見で ベーリングはこの仕事で 第1回ノーベル生理・医学賞を得ましたが なぜか北里先生は蚊帳の外でした
高橋医院