9月初めのNatureに こんな記事が掲載されました

Natureに掲載された記事

あなたが高齢の男性なら
新型コロナウイルスに感染すると
命にかかわり危険ですよ!


新型コロナウイルス感染の死亡率を
性別 年齢別に検討すると

男性は各年代にわたり 女性より死亡率が高く

男性は各年代にわたり女性より死亡率が高いことを示すグラフ

高齢者は若年者に比べ死亡率が高い


高齢者は若年者に比べ死亡率が高いことを示すグラフ

男性 高齢が
新型コロナウイルス感染の大きなリスク因子だというのです

このことは 
既にコンセンサスになりつつありますが
どうしてなのでしょう?

性 年齢 それぞれについて
その理由を解析する興味深い論文が出ましたので
紹介しようと思います


<男性の死亡率は高い!>

まずは 男女差

どうして男性の方が重症化しやすく 
死亡率が高いのでしょう?

この事実は早くから認識されていて
6月のNature Reviews Immunologyに
性差が免疫反応 新型コロナウイルス感染に及ぼす影響について
Reviewが出されています

6月のNature Reviews Immunologyに掲載されたReview

新型コロナウイルス感染の死亡率は
世界各国からの報告で いずれも男性の方が高い

世界各国で男性の死亡率が高いことを示すグラフ

男性の死亡率の高さは 37か国から報告されていて
平均して 1.7倍高いことが示されています

また この傾向は年齢に関わらず認められ
死亡率が高くなる高齢者においても 男性の方が高いのです

高齢者でも男性の死亡率が高いことを示すグラフ

ただ こうした傾向は 
SARS MERSでも認められており
日本やオーストラリアにおけるインフルエンザAの流行でも
男性の方が死亡率が高いのです


<性差の免疫反応への影響>

どうしてなのでしょう?

その原因として注目されているのが
性差の免疫反応への影響
自己免疫反応の起こりやすさ
感染微生物への免疫反応やワクチンの効果には
性差が認められることが明らかにされています

さらに
新型コロナウイルスに対する免疫応答の性差については
以下に示すことが指摘されています

新型コロナウイルスに対する免疫応答の性差についてまとめた図

@新型コロナウイルスの感染・ACE2発現への影響

新型コロナウイルスが感染する際に
受容体として用いるACE2は
女性ホルモンのエストロゲンにより発現が抑制されます

但し このACE2発現への性差の関与が
新型コロナウイルスの感染性に影響を及ぼすかは不明です


@自然免疫反応への影響

RNAウイルスを認識する受容体のTLR7は
X染色体により不活性化されるので 
女性での発現が高いです

また ウイルスが感染すると
体内ではpDCという免疫細胞が刺激を受けて
抗ウイルス物質のインターフェロンαを産生しますが

女性では
TLR7刺激によるpDCからのインターフェロンαの産生量が
男性より高いこと
が明らかにされています

つまり
性差がウイルスへの初期免疫反応に影響する可能性があり
実際に男性では
新型コロナウイルスの排除に時間がかかる傾向があると
報告されています

また 
マクロファージなどの自然免疫に関わる細胞の
サイトカイン産生や遺伝子発現にも 性差が影響し
男性では炎症性サイトカインの産生が高いのに対し
女性では炎症を抑制するIL-10などのサイトカイン産生が高い

性差の自然免疫反応への影響をまとめた図表


@獲得免疫反応への影響

女性は 
性ホルモンの抗体産生系への影響により
男性よりも抗体産生反応が強いです

また 性差は
Tリンパ球のサブセットの構成や
免疫調節作用を示すTregにも影響します

性差の獲得免疫反応への影響をまとめた図表

こうしたことにより 男性は女性に比べ
新型コロナウイルスの排除が上手くいかず
肺炎のコントロールが困難ではないかと考えられています

では 新型コロナウイルス感染では 
実際には どうなっているのでしょう?
高橋医院